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イントゥルーダー (文春文庫)

価格: ¥570
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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受賞に納得 ★★★★☆
 主人公は羽嶋。息子がひき逃げに遭い、意識不明の重体になる。しかし、その事故には不審な点が…羽嶋は事故の手がかりを得るため奔走する。はたして真相は?
 作中で、原発についての議論がある。作者は、元原子力研究所の研究員だっただけに、原発については人よりも深く考えていたのだろう。作中では、賛成派と反対派の意見が記されている。それを読んで感じたのは、しばらくの間は原発を使う必要があるということだ。原発は確かに絶対安全ではない。しかし、少なくともCO2を出さないエネルギー源であることは確かだ。オバマのグリーン・ニューディール政策もまだ実行されていない。それまでの過渡期の主要エネルギー源として、原子力は有効だと思われる。その後はどうするのか?心配無用、日本にそれを解決できるテクノロジーがある。「マグネシウム文明論」がそれである。マグネシウムを海水から取り出してエネルギーとして使うこの技術は、世界中に普及すれば一気にCO2排出量を70%ぐらい削減できるだろう。それぐらい画期的なテクノロジーである。近い将来、マグネシウムを燃やして電気を作り、マグネシウム電池車に乗ることになるだろう。それまでのつなぎとして原子力発電は続ける必要がある。
 覚せい剤、ダンプによる事故、原発…伏線らしきものが張られ、何か大きなものがその背後にあることを感じさせる。ミステリーの王道と言ってもよい。その真相が明らかになったとき、この本が賞を取った理由が分かった。途中までは、あまり夢中になって読めず、もっとコンピューターの(主人公はコンピューター・エンジニア)部分を中心に、クライム・ノベル風にしたほうが面白いなどと思ったのだが、やはり賞を取る作品は違う。きちんとどんでん返しもあった。この物語のハイライトは最後の20ページぐらいにある。それまでは退屈な場面もあるが、我慢して読む価値はある。ラストが単純な大団円でないところも気に入った。
無機質的な小説内容 ★★★☆☆
この小説には所謂「章」がなく、その代わり一日単位で物語が進んでいく面白い構成となっている。その一日がとても中身の濃い作品となっていて、読み手を引き付る要素にも感じられる。

物語はあるコンピュータ開発者の主人公に突然息子がいたと知らされたことから、この二人の関係がどのようになっているのか興味を抱かせられる。しかし、その息子は瀕死の状態であったことから謎が深まる。
一日の間にいろいろな人間が登場し、息子の周辺を巡って思わぬ展開が繰り広げられていく。

作品の中に出てくる技術的な事柄や説明などは、カタログをそのまま引っ張り出して並べているに過ぎなく、無機質的な内容に作家としての素人っぽさを感じる。
また、人間の感情表現にも深みがなく、読者をのめり込ませるだけの力が感じられない。

サントリーミステリー大賞・読者賞を受賞した作品にしては、いまから読むと内容に無機質さが感じられて、受賞内容に疑問を感じる。
主人公の危機感のなさが気になった ★★★☆☆
息子のことを少しずつ知りながら事故の詳細を調べていくストーリーはなかなかおもしろかった。ただ、壊れたPCからデータを取り出したり、他の会社のPCに浸入して重要なデータを盗みだしたりと現実ばなれした技術はちょっと考えられなかった。また、何度も襲われたにも関わらず主人公の危機感のなさもどうかと思った。
なんと中越地震の事態を予感させていたとは ★★★★★
読後思わず初出を見たら、1999年となっている。
なんともはやこれを見て驚いた。

本作は、ITベンチャーから大企業にまで育て上げた企業パートナーの
ドラマとも、コンピュータ開発にしのぎを削る企業での開発者の姿と
も、また、我が子の存在を25年間も知らず生きてきた父とその子との
邂逅の運命とも、ま、いろんなように読めるでしょう。
しかし、その様々な人間、開発者、経営者、親子、夫婦、家族等々の
葛藤の、中心を作るのが原発の建設にあったとは。

中越地震は2004年だったんだ、と言う事実は、この小説の価値をいや増しにも増すものでしょう。
いやはやまいった。これはすごい。
一連の著作の中で一押 ★★★★★
 サントリーミステリー大賞読者賞受賞作。登場人物が少ないということもあり大変シンプルで読みやすく一気に通読できました。
 また、主人公羽島の息子の死因が気になっていたが最後の数ページで一気に謎が解ける。高島さんの一連の著作の中で一押しです。