『リング』『女優霊』などのヒットでジャンルとして定着し、海外にもファンを得た“日本のホラー映画”。その立役者の一人である特殊脚本家の小中千昭氏が、ホラー映画を解体し、怖い映画とは何か、いかにして怖い映画をつくるかについて、初めて書き下ろしたのがこの本だ。
ファンダメンタル・ホラーの映画史を探る「恐怖の記憶」の章では、本当に怖い映画とはどんな映画かを考えながら、ショッカー、スプラッター、クリーチュアなど、さまざまなタイプの作品の“怖さ”を分析。『ねじの回転』『呪いの館』『ヘルハウス』『キャリー』『ジョーズ』などモニュメント的な名作が、「なぜ怖いのか」を教えてくれる。
10歳で映画を作り始めた著者は、作り手としての視点を早くから獲得し、中・高・大学を通じて技術の研究と実践にのめりこんでいた。「特殊脚本家の誕生」の章では、そうしたデビュー前後の過程や、『ほんとにあった怖い話』『学校の怪談』等テレビドラマの裏話がたっぷりと楽しめる。
しかしこの本の目玉は後半の、高橋洋氏との対話を言語化した<小中理論>(「恐怖の方程式」)、そしてリアリティについての諸問題の考察だ。脚本家や映像制作を目指す人はもちろん、映画ファンにも非常に興味深く読めるだろう。著者はこの本で、商業作品の脚本家としての手の内を惜しげもなくさらしている。その行為には新しい恐怖をつかむ決意と、何よりもホラー映画への深い愛情が満ちている。(佐々木順子)
史上最低の入門書か?
★☆☆☆☆
ホラー映画については、これまで世界各国でいろんな研究や紹介がおこなわれてきた。本書はそんな流れから無縁の、ホラー映画を時代精神全体のなかで分析してみようという気のない狭まい心の持ち主によって書かれたバッタ本か。
ファンダメンタルなホラー映画とは
★★★★★
本書では「ファンダメンタルなホラー映画」という筆者の独自の理論によって定義した本当に怖いホラー映画というのを法則化、体系化している。
筆者は高橋洋や黒沢清といった日本のホラー史において重要な人物からもその独特で論理的なホラー理論、通称「小中理論」の創始者として賞賛され、黒沢清は実際にその理論を自身の映画の中で実践している。
筆者の膨大なホラー映画知識をフルに活用し、また自身の映画製作体験の中から生み出された「ファンダメンタルなホラー」の法則は必読に値する。
また今旬な監督清水崇との対談も掲載されている。
ホラー映画への熱意が伝わる良書
★★★★☆
ホラー映画の「怖さ」を解剖してしまうということはネタをばらしてしまうことでもあり、同業者としては怖い仕事ではないだろうか。しかし著者はそれには臆せず、さらにあたらしい「怖さ」を求めていく宣言をする。その潔い姿勢からは、ホラーへの熱意がひしひしと伝わってくる。紹介されている映画を見た後、繰り返しこの書をひも解くうち、著者とともにさらに新しい「怖さ」を求めていきたくなる。
珍しい内容
★★★★☆
リング、らせん、呪怨etc...
ホラーブームも下火になりつつある今日この頃。
「だからこそ」ホラーというものに注目するのもいいのかもしれない。
古典ホラーの解体とこれからのホラー手法。
ミステリにはこういった本は多数あるが、存外にホラーには解説本というものが少ない。
それゆえこの本は貴重な一冊になると思われる。
買って損なし。