「荒城の月」も平和を希求する賛美歌になる
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「荒城の月」がベルギーで賛美歌となっている。作曲者滝廉太郎がキリスト教の洗礼を受けたキリスト者であったこともあり、ベルギーの修道院で「ケルビム賛歌」の曲として歌われている。この賛歌は、ミサ(東方正教会では聖体礼儀という)のクライマックスで歌われる非常に大事な歌である。ジムネーズ神父は、「荒城の月」の旋律に「たましいの深い動き」、祈りと愛を感じ取っている。著者は、この賛歌を聴いていて「深い、不思議な平安」が漂っていると感じるという。
また、作詞者土井晩翠の夫人と長女がクリスチャンであったという。晩翠は音楽会の挨拶で「日本中が荒城そのものだね。私の詩は、四十余年の昔に、今日のあることを予言したような感があるね。…まったく衰弱している冬枯れの日本も、必ず春が来る。この希望をもち、明治以来のミリタリズムを捨てて平和と人類愛を理想とすべきだろうね」と述懐する。天の光、平和を希求する歌だ。
心の糧となる楽曲の成り立ちがと数々の逸話が満載されている。