これからの韓国との文化交流を考えるために
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昨年度(2008年)、立命館大学で主催された「RiCKS韓国映画フェステイバル」のゲストだった安聖基(漢字での表記が好きなのであえてこう記します)氏のトークショウとシンポジウムの内容をまとめた本です。もちろん、私もこの会に参加した一人です。
まず、驚くべきことは立命館大学のコリア研究センター主催でこのような素晴らしい企画が毎年行われていることです。センター長の徐勝氏の人望も大きく反映されている思うのですが、ゲストがこれまた毎回素晴らしい!特に昨年度は、「韓国映画の神様」ともいえる安聖基氏がゲストで大盛況でした。
激動の韓国映画史のなかであらゆるジャンルの役に挑戦してきた安聖基氏ですが、物静かで思慮深い紳士でした。言葉一つひとつが韓国映画をリードしてきた自負とこれからの韓国映画を見据えた実に知的な内容、それでいって優しく穏やかな口調、浮き沈みが激しい韓国映画のなか現在も第一線で活躍されている姿はうなずけます。そんな彼の姿が、ブックレットに克明に記されていますのでぜひご覧下さい。シンポジウムのゲストでは、韓国映画ニューウエイブの波を紹介してきたスタジオ200の八雲氏も参加されておりました。
1980年代の韓国映画の流れを日本に紹介してきた話も興味深く、こうした草の根の活動から今の韓国ブームの基盤ができてきたと実感できます。トークショウの内容では、あまりプライベートな話をしない安聖基氏の家庭での微笑ましい様子も伺うことができます。特に奥様の皿洗いを手伝うエピソードは話を聞いていたおばさま方から拍手喝采でした。
このブクレットの巻末には冨田美香氏作成の詳細な安聖基氏の映画の軌跡が掲載されています。今まで見た紹介の中でこのように克明にまとめられたものを見たことがありません。私自身とても参考になりましたし、まだ見たこともない映画も多くありました。韓国の歴史と文化を知る上でも、未公開になっている過去の作品も日本に紹介されることを望みます。そしてこのような会がぜひ韓国の大学でも主催され、日本映画を通して市民レベルの文化交流が生まれれば素敵だと思っています。