流石
★★★★☆
待望の文庫化!
冒頭からハラハラさせるところは流石って感じやけど、どうも今までの犯人と違って小物に思えてしまうんですよ。
でもディーヴァーの事やからとんでもないドンデン返しが待ってるんでしょうね。
上巻を読む限りでは本当の犯人の目的もぼやけたままで全く先が読めないです。
犯人側の心理面も深く掘り下げてるところがいいですね。
これが後半にいきてくるってパターンやけど期待して下巻を読みたいと思います。
魔術師で登場したカーラがちょっとだけ再登場するのもシリーズのファンとして嬉しいサプライズですね。
パーカー・キンケイドまで登場する本作。外せない大傑作!
★★★★★
邦訳は2006年9月30日リリース。文庫化は2009年11月10日。リンカーン・ライム・シリーズの第6作。実はアメリカではジェフリー・ディーヴァーはこの時既に第7作にあたる『The Cold Moon』を刊行済みだった。
相変わらずのリンカーン・ライムである。この辺はディ−ヴァーの長編を読破した人でないとわかり辛いが何しろ不変なのである。ガスクロマトグラフィでお菓子を検出してしまうところが既にリンカーン・ライムだ。犯人の手製の弾丸から銃の素性をあっさり分析するアメリアもアメリアで相変わらずである。(>_<) 着々とディーヴァーの仕掛けた連続トラップが炸裂し、ジェット・コースターな語り口に時を忘れてしまう出来映えなのだが、本作は特にラストがスゴイ。そして最後の章のライムとアメリアの会話に不覚にも涙しそうになった。
パーカー・キンケイドまで登場する本作。外せない大傑作と言い切らせていただきます。
ライムの頭脳が時空を超える!
★★★★☆
リンカーン・ライム・シリーズは、毎回事件が起こる場面設定がまったく違いま
す。今回はニューヨーク、ハーレムが舞台になっています。時代はさかのぼり約
140年前の南北戦争終結後から1920年代のニュー・ニグロ・ムーブメント、いかに
汚い言葉で相手を罵しるかを戯れに競う“スナッピング”公共物にスプレーで落
書きをする“バブルレター”などの黒人カルチャー、アフリカン・アメリカン
日常会話“AAVE”、ハーレムの貧困や荒廃した高校生の日常生活が丁寧に、
またいきいきと描かれていました。そうしたアフリカン・アメリカンのカルチャー
は本作品を読むまで関心を持つこともなかったと思います。ディーバー自体もそ
れほど詳しくない状態から徹底した取材をして、ディーバー自身の視点でストー
リーに書き込んでいるので、ハーレム、ブラック・カルチャーが非常にわかりや
すく理解できました。
ストーリーはハーレムの女子高校生が理由もわからず殺し屋から命を狙われるの
ですが、彼女がなぜ命を脅かされなければならないかが、ひとつのテーマになっ
ています。そして殺し屋から被害者を保護するために、「コフィン・ダンサー」
に登場以来シリーズ常連のローランド・ベルも活躍します。情報とストーリーの
バランスは非常に難しく情報が多すぎても雑多になってしまいますし、少なけれ
ばリアリティがなくなる。今回はアメリカン・アフリカン・カルチャーの描写に
力が入って活劇部分があっけなかった印象を受けました。
しかし縦糸にあたるライムの苦悩やサックスを含める仲間の危機もしっかり描か
れていますしシリーズを読んでいる方なら楽しめたのではないでしょうか。逆に
本作品だけを読んでもシリーズの面白さは、十分伝わり難いのではと思いました。
2つのストーリーが絡みあう、アクション寄りのストーリー
★★★★★
私の期待値のもっとも高い作家、それはディーヴァー。
本作はプロットが凝っています。
NYの殺人事件に加えて、
アメリカ史にまつわる古い事件が時空を超えて提示されます。
「2つの事件がやがてシンクロし・・・ 。」というお話です。
相変わらずめまぐるしく動く物語。
本作では、アメリカ、そしてニューヨークの歴史を謎に解きに取り込んでいます。
ストーリーの最後のプロット運びに「あれっ」と思いました。
ディーヴァーの長編は、
プロット、人物描写(ドラマ)、アクションの3つの要素が絡み合って進んでいくのですが、
人物描写とアクションはまずまず。
今回の敵役、「未詳」のキャラはなかなか魅力的。
ちょっと同情したり。被害者の女子高生はいまいち固いですが、
その女友達や舞台となるハーレムの街の描写などは、リンカーン・ライムシリーズの平均値以上。
アクションシーンは十分。
コフィンダンサーまでは行かないまでも、ハードな銃撃戦、爆弾処理シーン等もふんだんで、満足しました。
ただ惜しむべくは、最後の2章ですね。
それまでの積み上がって、積み上がって固めた伏線からクライマックスに至ったエンディングに、
2回のどんでん返しは不要かと私は感じました。
名人も凝りすぎましたね。
最後に、本作には、今までの登場人物がふんだんに登場します。ファンには楽しいです。
ファンにとってはこたえられない、意欲的な作品
★★★★☆
ジェフリー・ディーヴァーの<リンカーン・ライム>シリーズ第6弾。
今回は、ライムが現在の事件と140年の時空を超えて過去の謎に取り組む。
現在の事件は、ハーレムの高校に通う16才の黒人少女の命を執拗に狙うプロの殺し屋との戦いである。彼は何事に対しても無感覚で、“アベレージ・ジョー”という異名を持ち、目くらましのために無関係の人の命を奪うこともなんとも思わない。しかも、証拠をコントロールすることにも長けているという難敵である。
さらには、血で絵を描く“グラフィティ・キング”という怪しげな元服役囚も絡んでくる。
そこに、少女の先祖が関与した140年前の黒人公民権運動にまつわる謎まで登場し、物語は複雑になり、章を追うごとに緊迫感が増してゆく。
本書もこのシリーズの他の作品と同様、全45の章を通して、常にサプライズがある。私もハラハラ・ドキドキの連続で、思わずどんどんページを捲っていた。
そして、ライムの緻密な鑑識捜査が常に事件の先を読み、「証拠物件一覧表」が埋っていくにしたがって絡み合った謎が次第に明らかになってゆく。注目すべきは140年前の謎も、現代の視点から最先端の技術を用いて捉えている点である。
また、命を狙われ続ける少女、ジェニーヴァの存在も忘れてはならない。少女らしい純粋な心と強靭な折れない意志をあわせ持ち、ライムたちとも十分に渡り合えるほど機転が利く。彼女は、この衝撃的な作品の魅力を一層引き立てている。
本書は、現在の事件と過去の謎の融合という難しい、好奇心をそそる問題にトライして、なおかつ、ディーヴァー最大の持ち味である、“ノンストップ・ジェットコースター・サスペンス”、“どんでん返し”に満ちた、ファンにとってはこたえられない、意欲的な作品である。