性善説のユートピア
★★★☆☆
伴先生こと伴三千代は新任の女学校教師。希望で胸をふくらませながら地方の赴任先へ行ってみると、予想外にもそこはさびれかけた二流校で…。乙女版「坊っちゃん」という触れ込みから熱血先生の奮闘物語を期待すると大はずれ。描かれるのは金持ちの高慢少女、明朗で善良な少女、そして生き別れの肉親との再会といった、吉屋小説おなじみの世界。未読の方のためにこれ以上詳細には触れませんが、かなりおめでたい楽天的な物語です。解説の嶽本野ばら氏は「ユートピア的」と評しています。あるいは、発表当時(昭和15年)の暗い時局に対する抵抗なのかもしれません。