シンクタンクの出力の仕方がわかる本
★☆☆☆☆
野村総研を経歴にもつ著者らが携わったロボットに関する報告書作成業務をベースに書籍としてまとめたのが本書。序文でソニーのペットロボットAIBOの事業撤退に触れて「この業界は難しい」としながら、本文の内容はロボットの産業化の夢ばかりが語れています。夢を実現するための処方箋はシュンペーター理論の「イノベーション」にお任せという感じで具体的な方策については触れられていません。略歴より工学的なバックグラウンドを持たない著者らの執筆できる限界を感じる内容です。
日本の行政は様々な場面でシンクタンクを使っていて、売り上げのかなりの部分を行政からの受注によっている企業もあります。このようなシンクタンクにおいて行政の意思に反する内容の報告書の作成は、次の受注にも影響することからできにくいのは想像に難くありません。本書もその域を出ていないといえます。
本書は書かれている内容を鵜呑みにするのではなく、「誰がそのロボットを買うのか?」という観点に立って批判的に読むのがよいと思います。それにより本書に別の価値が生まれます。