日米における人間形成を比較するために,両国での子供に対する考え方,子供のしつけ方,親子関係,初等教育での学校,教師,生徒の関係などを説明.その後「個と集団」に対する考え方と,個が集団へ同調する2つのモデルを検討している.日本において,個の集団への同調が構造化され方向付けられているとする著者の洞察は興味深い.本全体を通して文献の引用や,実地検証による具体的説明が豊富で説得力の高い内容となっている.日米それぞれの公立校と私立校を調査し,またアメリカでは貧困地区の学校も検証しているのはユニークだと感じた.日米の教育事情に関する実際的な資料としても有益で,日米両国で教育を受けカルチャーショックと逆カルチャーショックに交互に経験した著者自身の体験談も面白く読!んだ.
本書を読んでもう一点有意義だったのは,日米双方の教育を比較文化的に検討する際に用いられるステレオタイプ的な見方(比較軸)にどのような偏りがあるかを指摘していること.日本人がアメリカでの教育に抱く一般的視点と,アメリカ人が日本での教育に抱く一般的視点のそれぞれに,どのような偏りがあって,それがどのような文化的背景に拠っているのかを説明している箇所は実に興味深かった.