工藤冬里の弾く、ミサ曲のような荘厳で大音響かつ、八方破れなオルガンに、大村礼子の透明で無垢な歌声がかぶる・・・。時折パーカッションが入る以外に、全体にひどくシンプルな作品だが、与えるインパクトは強烈で感動的だ。この作品が発売された当時、音色がヴェルベットの「シスターレイ」（特に後半のオルガンソロ）やルーリードの傑作、「メタルマシーン・ミュージック」、スーサイドの名作、１枚目とかと似た感じだな、と思ったが全く違う・・・。この作品には、一切のなごみや癒し、浄化を拒絶した、激しく優しい出会いがある。何とも例えようもない再現不可能な奇跡的に素晴らしい作品だ。とは言え、誰もが楽しめる作品ではないかもしれないが、いったんハマると恐ろしい名作。

1980年初頭、現マヘルシャラルハシュバズの工藤冬里、礼子夫妻の２人がやっていたバンドと言えば若い人に伝わるだろうか。１９８０年（私が生まれる前)ひっそりと出て、一時期５桁の値段がついた後、１９９９年？頃１度再発した後の今回の２度目の再発。
鳴っているのは冬里氏の大音量のオルガンをバックに礼子さんにやまびこの様な透明な歌声で諦念のあふれた歌を歌うというもの。このアルバムが生まれた経緯についてはロック画報８号を見てほしいけど、８０年初頭、マイナーなど客が指で数えるぐらいしかいないライブハウスで演奏していて、アルバムが出た当時も反響がほとんどなかったけれど、当時パンクの渦中で最も特異な音楽が生まれた。音は裸のラリーズ、スーサイド等に影響されたものだと思うけれど、”うた”の訴求力ゆえに圧倒的に美しい。ヴェルヴェットアンダーグラウンド、上記２バンドなどが好きな人は１食抜いてでも買え！言いたい名作。