会社でキャリア形成するヒント
★★★★★
たまたま本書を手に取る機会がありました。そういえば、自分は学生の進路指導に関わっている、企業情報本はどのようなものだろう。表紙を開いたら・・・あっという間に読み終えてしまいました。予想を裏切るおもしろさだったのです。
まず東レという会社について。主として素材を扱っている企業ゆえに、文系の学生にはなかなか注目されていない会社でしょう。CMなど見ることありません。しかし、この会社が長い期間にわたって従業員の知恵を結集させ、多くのイノベーションを市場に実現してきたことがよく分かります。まず、榊原社長のインタビューがおもしろい。高校生の時に炭素繊維に出会ってから、50年がかりでビジネスにしてきているのです。60過ぎのお年と思われますが、今でも皇居周辺で蝶の収集にも勉められているとのこと。若い方ですねえ。また、事業をものにしてきたサラリーマンが共通して言うのは「うちの会社は20代でも好きなことをやらせてくれる」。社長だけでなく他の社員の方も同じことを言っているのに感心。これは、会社がそうというより、個々の社員の本気の結実だと思いました。部門の壁が低いとか、先輩が後輩を教える風土とかも、この方たちが努力してきたんです。キャリア形成や、いい仕事をするうえで、大きなヒントとになると感じました。
そういう意味でも、会社を通して人物像に触れられるのが、本書の魅力。会社の歴史にはワクワクするところが感じられましたし、3名の執筆者のバランスもいいんじゃないか。他社についてはどのように書かれているか、読んでみたくなりました。もちろん、学生には読むとよい、といいます。