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百番目の男 (文春文庫)

価格: ¥810
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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唖然とさせられる真相が… ★★★★☆
カーソン・ライダー刑事シリーズの2作目であるデス・コレクターズ (文春文庫)が非常に完成度の高い作品であったため、
遡って1作目である本作品を読んでみました。

物語の舞台は、アラバマ州モビール市。
プロローグは、緊張しながら検死に臨む病理学者コールフィールドの描写。
この検死室内で、ある事件が勃発します。
そして、舞台はパーティー会場へ。
ここから、採用3年目の若き刑事、カーソン・ライダーが登場するのですが、パーティー終了後、事件が発生。
市内の公園で、男性の死体が発見されたのです。
死体は頭部が切断され、ある部分に意味不明な文字が書かれているという不可解な状況。
やがて、第2、第3の殺人事件が発生していきますが…。

この作品の最大の特徴は何といっても、
「なぜ死体に文字が書かれていたのか?」という謎に対する「唖然とさせられる真相」でしょう。
ミステリの愉しみの一つは、「よくこんなことを考えつくものだ」という驚きを味わうことだと思いますが、
その愉しみを味わえるのが本作品です。

本書の巻末の「謝辞」には、妻とふたりの子どもがささえになって本作品が生まれたとありますが、
作者はこのネタをどうやって家族に説明したのだろう?
そんないらぬ心配をしてまうほど、「……」な真相が物語の最後に待っています。

もっとも、本作品がアイデアだけが取り柄のものではないことは、
2作目の成功が示すとおりで、小説としての完成度もなかなかのものです。
ライダー刑事の若さゆえの仕事や生い立ちに関する苦悩、新人の病理学者アヴァ・ダヴェネルとの恋物語など、
青春小説的な要素が取り入れられていて、サイコ・サスペンスなのに、爽やかな印象を持てるところは、作者の技量の高さを窺わせます。

小説としての完成度は2作目の方が上ですが、
強烈なインパクトを持った、デビュー作に相応しい作品と言えるのではないでしょうか。
《カーソン・ライダー》シリーズの第一長編 ★★★★☆

「殊能将之の選ぶ変態本格ミステリ・ベスト5」のうちの一作。

ここで言う「変態本格」とは、殊能氏曰く〈単に変態が登場する
本格ミステリではなく、本格ミステリの醍醐味であるトリックや
どんでん返しに変態性が深く関係している作品を指す〉そうです。

たしかに、本作の死体の下腹部に記されていた意味不明なメッセージの
ホワイダニットは、「バカ」という以前に「変態」の発想で、とても一般人に
考え出せるものではありません(マッチョな男ばかりが犠牲者に選ばれた
理由も振るっていますw)。


けっして万人に薦められる作品ではありませんが、バカミス
(変態)耐性のある方なら、読んで損はない(笑)作品です。




オチ意外は完全に凡庸 ★★★☆☆
死体に施された文字の意図は何か?
若き刑事の活躍を描いたサイコ・サスペンス。

バカミスにも通じるどんでん返しが凄い!って聞いてたせいか、
あまりにも期待し過ぎていた。
でもなあ、最後の真相を知ったからといって、
俄然作品が光り輝くわけでもない。

首切り事件に、性格の異なるバディ刑事もの。
サイコな兄貴を持つ主人公。
対立する警察組織……。

その設定一つ一つがありきたりだ。

また、下手な訳のせいか、描写についても今一つ。
ライトなタッチの文体はスラスラ読めるけど、
別に洒落が効いてるわけじゃない。
チャンドラーやレナードには遠く及ばないし。

とにかく、この小説を読んでると
アレやコレといった他の面白かった小説を思い浮かべてしまう。

ただ、サイコな兄貴と刑事の弟の関係は、
ちょっと感心した。
最後のエピローグでの兄貴がとった行動。
ちょっとした兄弟愛が感じられ、
全編に渡ったエグい描写も、これで清められた。

どうせなら、この兄弟を中心に書いて欲しかったけどね。
サイコミステリーとしては、成功。 ★★★★☆
「百番目の男」という題名に惹かれて、思わず手にした作品。
タイトルの意味は早々に出てきます。
「あぁ、そういう意味だったのね」と、妙に納得。
主人公は、暗い過去を持つライダー刑事。
相棒のハリーは、父親的な立場とでもいうべきか、ライダーを諫めながら見守っている。
上層部の嫌がらせに対抗しながら、犯人を追い詰めて行くストーリー。

ライダーの兄が、あの「羊…」のレクターのような印象を与えます。
まぁ、レクターのような静かな狂気とは正反対ですが。
兄との会話を読んでると、それだけで「狂気」というものが背筋を這うような描写が怖い。
人間の生い立ちが、人を根底から変える恐ろしさ。
ストーリーは元より、狂気の狭間で兄弟の愛情が垣間見えてきます。
血は水よりも濃し…。

ちょっとした恋愛もはさんでありますが、サラッとしているので話的にも邪魔になりません。

何故、首を切断する意味があったのか?
体に書いた文字の意味は?
体系に拘る意味は?

すべての意味が、繋がるラスト。

サイコミステリー的な意味では、成功だと思います。
コレが、デビュー作だとは…。あとがきを読むまで知りませんでした。

次作があるというので、早速手に入れたいと思います。
最高のサイコ・サスペンス ★★★★★
 近年読んだ作品の中では最高のサイコ・サスペンスでした。
 99人が同じ考え方をする中で1人だけが異なる根拠で思考する。100番目の男に必要なのは心理学(僕)か超心理学(僕の分身)か?全般的に猟奇的で陰鬱なストーリーですが、主人公「僕」の相棒のハリーのウィットでマイルド感を加味しています。そのため、とことん陰鬱になることも無く一気に読めます。
 これがカーリィーの処女作とは驚きました。これだけの登場人物を扱い、全てを絡み合わせて、警察ストーリーとしてまとめるとはすごいです。なにしろ、猟奇殺人あり、出世争いあり、上司との軋轢あり、職場のもめ事あり、同性愛あり、アル中あり、精神病あり、児童虐待あり・・・。ありったけの複雑さを詰め込んで、最後にどんでん返し。1作目がこれですから、2作目は評価がシビアになりますが、さらに上をいくのか、これがピークなのか?興味深いです。