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ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

価格: ¥1,890
カテゴリ: 単行本
ブランド: 早川書房
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フィクションとは思えぬリアリティ ★★★★★
数学者の性を描いた小説の中でベストではないでしょうか?

天才数学者が、ゴールドバッハの予想にとらわれた為に、結局何も成し遂げられずに人生を終えてしまう、という悲劇の物語です。

数学者の兄が「あいつは罪を犯したのだ。素晴らしい数学の才能を与えられていながら、誰も解明できない難題に取り組み、才能を無駄にした。才能を与えられた物は、自分の才能のうちで解決できる問題に取り組む義務があるのに。」というような事を息子に話すのですが、こういう発想が興味深かったです。

著者自身も、数学専攻だっただけに、非常に簡潔な文体で迷いが感じられません。お涙ちょうだいな展開でなく、淡々と、それでいて美しく綴っていくのが素晴らしいです。

歴史に残る数学者のハーディやラマヌジャン、ゲーデルなどが登場するため、数学史の勉強にもなると思います。

読んで後悔しないと思います。

ノンフィクションドキュメントを読んでいるような迫真の内容でした ★★★★★
とても不思議に小説でした。思わず惹きこまれました。ゴールドバッハの予想は、とても簡単に言い表すことができる数論の未解決問題です。これをテーマに、その解決を目指した研究者(叔父)の生涯を描いています。著者が研究経験もあるので、学会の様子や研究過程の記述が、とても現実的でした。実在の人物の様子や係わり合いもとても自然です。単に数式を取り上げただけで、その内容と主題を理解して扱いきれない見せかけの小説もあるようですが、本書は充実していました。
片道約1時間ほど電車に乗って通勤しているので、1日で読み終えましたが、朝は電車を降りるのがいやになりました。帰りは、自宅近くの駅に着いたときに残り数ページだったので、改札口を抜けて、しばらく通路で立ったまま最後まで読みました。読み終えた日の晩は、内容が私の夢にも現れました。
ところで、欧米の人には、博士やポストドクのときに良い研究成果をあげても、まったく関係ない分野の職業につく人が珍しくないのですね。特に、小説家やジャーナリズムの世界に入っていく人が活躍しているように思います。そのような一定以上の研究業績や専門知識を持った人が、専門以外の分野に進出することで、全体の文化水準が保たれ、このような小説が受け入れられるのだと思いました。
数学者は生まれるものであり、作られるものではない ★★★★★
 狂気と天才は紙一重、数学ほどにこのことばが相応しい世界は他になかろう。
「最高の業績を残すための必要条件は――もっとも、十分条件ではないのだが――ただ一途に
身をささげること」、不朽の名声を残すか、人知を超え出た狂気を行くか、あるいは何一つ
得ぬまま終わるか……
 今なお証明の果たされぬ「ゴールドバッハ予想」をめぐって、叡智をめぐるあまりに苛烈な
賭けを描き出した名作。

 この小説はあくまでフィクションであり、主人公の伯父ペトロスは架空の人物、ただし、
カラテオドリ、ハーディ、ゲーデルなど、登場する数学者の多くは実在のもの。
 読むにあたっては数学の知識は特に前提とはされないように思う。20世紀数学史の入門書と
しても楽しめるだろう。ただしその歴史をかじっていれば、特に後半の方などはなおいっそう
面白いものとなる。
 その予習として一冊を薦めるのならば、ダービーシャー『素数に憑かれた人たち』を挙げて
おきたい。この本は、ゴールドバッハ予想と同じく21世紀に残された数学史上の難問の一つ、
リーマン予想をめぐる物語。全体を読み解くには一般人としてはかなり高度な数学の知識が
要求されるが、伝記的な記述部分についてはその限りではない。

 知と狂気をめぐっての同様の主題を扱ったものとしては、錬金術をめぐって描かれた
バルザック『「絶対」の探求』、あるいは小説の王『ドン・キホーテ』を指摘しよう。
 数学者の狂気の軌跡としての記念碑的作品ではパスカル『パンセ』。
 変化球としては、碁を主題とした川端康成『名人』、さらに変化球では将棋を扱ったマンガ
『月下の棋士』。等価交換をキーワードにした『ハガレン』なんかも案外引っかかるかも。
学問としての「数学」の美しさと悲しさが静かに横たわるような作品。 ★★★★★
 師弟関係―何をもって「継承」というのか―について、ひいては、師弟関係の多様なあり方について考えさせられる。

 本書は、ペトロスと彼の甥である「わたし」の対話を通じて、数学の魔力とそれに魅了され囚われた者の悲しみ、さらには、師弟関係の意味を静かに語りかける味わい深い作品である。
 「わたし」は、ペトロスの偉大な研究過程の一端を知ったことから、ペトロスの人間性そのものに加え、彼が生涯を一心に傾けた「数学」に魅了され、ペトロスの後を追い、数学者になろうと決意し、実際、数学の成績もその熱意と比例し急上昇する。しかし、その決意を嬉々として伯父に宣言したところ、「数学者は生まれるものであり、作られるものではない。遺伝子に特別な素質を持っているのでなければ、生涯無駄な骨折りをすることになるし、ある日気づいてみれば凡人で終わるのだ。」と諭し、数学者の道をあきらめるようにと取り合わない。それでも自分の意思は変わらないと詰め寄る「わたし」に、ペトロスは、「最高の才能があるとわかったとき、そのときに限り数学者になると約束して欲しい。」と言い、「わたし」の才能の有無を判断するために3ヶ月を期限に、一つの問題を出す。


「証明してもらいたいのは、2より大きいすべての偶数は、二つの素数の和で表せることだ。」

  数学に明るい者は、物語の随所に出てくる公式や定理、そして歴史に名を残した数学者の功績の数々、そして、数学者による数学の方法論を用いたブラックジョークに大いにハマるように思われる。私にとって数学は「もう二度と取り組みたくない」ほど苦手だった科目であるため、上点についてはそこまで感情移入することができない。しかし、ペトロスと「わたし」の掛け合いは、研究をするプロセスや、師匠の背中を見る弟子のまなざし、ひいては弟子から師匠が何を得るかという大きなテーマを感じさせるものであった。
数学史と物語を見事に融合させた小説 ★★★★★
日本で小川洋子著の「博士の愛した数式」がベストセラーになった時、某数学掲示板で
「『ペトロス叔父とゴールドバッハ予想』には遠く及ばない」と評されたことがあった。

本書は、想像上の数学者ペトロスの生涯を描いたドキュメント風小説であり、物語は
著者の数学史に対する深い知識に裏付けられて非常に精緻に構成されている。
数学者という職業に対する描写も細かく興味深い。確かに、一般人受けを狙った前出
「博士の愛した数式」に比べて、より知的でエキサイティングなストーリーを楽しめ
る一冊である。