もって自らを鼓舞すべし
★★★★★
ヴィオラの地位を高めてきた世界的存在が、来し方を振り返った自伝。
よき直情径行、即断即決の姿勢が、類稀な才能と合わさったことで深い
音楽性を作り上げることとなった様がテンポよく語られる。
音楽家ならずとも読んでいて嬉しくなり、読者はどんな職業にあっても
なんらかの鼓舞を観ずることができるのではないか。そんな効果は
著者にあっては予期せざることだろうが、一言で読後観を言うならば、
はれやかになりました、ということであった。
第一人者ならではの圧倒的な迫力
★★★★★
最高に感激した本である.まず弦楽四重奏団を内側から見た息詰まるような描写.音楽は言葉より直接に脳に訴えるだけ,お互いの関係は大変なのだ.それから Bartok が未完成のまま遺した Viola concerto の完成版の新しい版に納得が行かないために作曲者の息子を尋ねて Florida まで旅をする執念と行動力.今井さんはとにかく積極的で行動的で,話を読んでいるだけで気持がよい.子連れ狼などと言われるがそれがいっそ痛快なのだ.付録に付いているミニCD がまた名演で,かつ録音が良く,これがヴィオラの音と表現力だと明瞭にデモしてくれる (最後はフラジョレットだ). これほど感動的な音楽の本は稀である.そうして音楽はただ聴くだけのものではなく,演奏に参加するものだ,と力強く説かれる.その通り,と同感するが,少し彼女の CD の手持ちが少ないのも気になって来た.強く推薦.
ヴィオラの魅力を伝えるということ
★★★★☆
世界的ヴィオラ奏者であり、サイトウキネンオーケストラでも活躍されている今井信子さんの著書。
今井信子という音楽家を通じてヴィオラという楽器に興味をもつようになった方も多いのではないだろうか。音楽家として、ヴィオラ奏者として、母として、人間として、これまでに積み重ね、 経験されてきた、努力の日々、辛かったこと、苦しかったこと、そしてその先にある喜び、たのしみが書かれている。ミニCDもついているが、そもそもこの本が書かれたきっかけは、今井さんが「ヴィオラの魅力をもっともっと伝えたい」という思いからのようだ。私は、サイトウキネンオーケストラで今井さんの名前は存じ上げていたが、ヴィオラ音楽だけを聴いたことはあまりなかった。この本をきっかけにして、ヴィオラ音楽をもっと聴いてみようかと思う。