ついつい感傷的に聴いてしまいました
★★★★★
例えば、置いてきた「何か」を思い出す瞬間、あるいは空虚な部屋で気付く「何か」の不在。ダンが「自分のアルバムを1枚だけ聴かせるとしたら何?」と問われて選んだ"The Innocent Age"は、そういった、表現しがたい郷愁に似た思いを様々な角度から捉えた素晴らしいアルバムだったと思います。
だから、Dan Fogelbergが去ったときに感じた喪失感を「Innocenceが失われたというような感覚だった」という風に妻Jean Fogelbergが表現するのはすごく自然に思えましたし、彼女がデザインしたアルバム・ジャケット・・・眩しいような夫の笑顔と彼の撮影した彼の愛した土地の写真を重ねたその隅に、誰も気がつかないほど自然にこっそりと"The Innocent Age"のジャケットを飾ったアンティーク・ドールを合成して横たえた気持も、痛いほど分かるような気がするのです。
例えばBob Dylanの作品も興味がない人には「どれも同じ」と聴こえるように、このDan Fogelbergの遺作もこれまでと「同じ」ような内容かもしれません。ただ、丁寧に積み重ねられたオトを背景にした彼の音楽は、確かに一聴して分かるほど彼独自の穏やかな色を湛えていますし、好きな人には本当に心に残る作品になると思います。
John Lennonが最後に"Grow Old With Me"と、Freddie Mercuryが最後に"The Show Must Go On"と歌ったように、Dan Fogelbergは"It's Over"と歌い、その最後を終えます。しかし曲が終わった後に付け加えられた和音は、ファースト・アルバムHome Free の始まりにつながるように仕組まれています。どこまでDanが意図したものか分かりませんが、歌詞とは裏腹に「終わりではないんだよ」と、悲しむ人たちに対してこっそりとメッセージ残してくれたようにも思うのです。
He still lives in our hearts.
★★★★★
彼の曲を初めて聴いたのは、大学生の時。"Same Old Lang Syne "
邦題:「懐かしき恋人の歌」でした。
訳詞を目で追っていくと、その情景が目に浮かび、そして最後の詞
”The snow turned into rain・・・”
音楽で涙ぐむ経験をしたのは、この時が初めてでした。
本作でのお気に入りは、9トラックの”Sometime A Song" とても
シンプルな曲ですが、彼のやさしさが伝わってきます。
突然の訃報から、早2年。、彼が残した素晴らしい数々の曲を、
これからも聴き続けることでしょう。
Thank you very much,Dan.
ダンの最後の歌声
★★★★☆
’80年代の充実していた頃と比べると、やはりテンションは落ちます。制作された時期がクレジットされていないので、よくわかりませんが、キャリアの初期に書かれた曲が多いのではないかと思います。それほど凝った作りのものはなく、オープニングのタイトル曲あたりは、2枚目、3枚目あたりに入っていても違和感がないかなと思います。個人的に気に入っているのは続く2曲目。取りとめもないメロディーなんですが、あまり彼の曲にはなかったタイプの曲で、どの時期に書かれた曲なのか興味があります。(すみません。この曲カバー曲でした。)最後の「Birds」は、他の方も書いていらっしゃるようにニール・ヤングのカバー。あまり他人の曲をカバーすることがない人なので、(「ツインズサン」や「ハイ・カントリー・スノー」で何曲かありますが、これらは企画性の強いアルバムなので、例外と考えた方がいいかと思います。)ブルース・コバーンの作品を取り上げた「ワイルド・プレイス」の頃の音源かなあなどと勝手に想像しています。何にしても彼の声が聞けるのはこのアルバムが最後になってしまいましたが、今まで発表した素晴らしいアルバム、曲の数々はこれからも色あせることはないと思いますし、私自身も定期的に聞くように思います。最後に☆4つという評価ですが、心情的にはいくらつけてもいいんですが、過去の傑作をしても☆5つしかつけれないのであれば、やはり同等の評価はできないと思い、4つにしました。
最後は涙が止まりません
★★★★★
一昨年に他界した Dan Fogelberg 最後のオリジナルアルバムということで、とても楽しみにしていました。A包みを開けた時、30年前に The Innocento Age のアルバムに初めて針を落とした時のようなドキドキを感じました。そして聴く…。とてもピュアで、美しいアルバムです。自分に残された人生と向き合っている人だからこその静かさに溢れていました。そして最後の Birds。Neil Young のカバーですが、It's Over という一言で締めくくられていて…。さらに最後の余韻に流れてくる旋律は、なんと…(実際にご自分で聴いて確かめて下さい)。「本当にこれで終わりなのだよ」と Dan から語りかけられているようでした。そしてしばらく涙が止まりませんでした。Dan 本当にありがとう。そして合掌。