Travelogue
価格: ¥2,788
本作を聴けばおわかりの通り、ジョニ・ミッチェルは前作で大きな成果をあげたスタイルに非常に強いこだわりを持っているようだ。けれども、前作『Both Sides Now』ではアメリカ生まれのスタンダードナンバーを取り上げ70人編成のオーケストラに乗せ、さらに彼女独特のひねりを加えていたのに対し、本作では自らの旧作を取り上げて同じ手法を用いている。オーケストラと20人のコーラス隊、それにハービー・ハンコックやウェイン・ショーターといったキー・プレイヤーと共にロンドンのエア・スタジオでレコーディングされた2枚組の本作は、彼女の最も重要なナンバーの情感豊かなニューヴァージョンである。たとえば、「Woodstock」は映画的でありスケール感にあふれ、「Hejira」はストリングスによってさらにしなやかになっている。けれども、ミッチェルは極端にセンチメンタルになることを避け、厳密なジャズ的アプローチを導入している。その例として、「God Must Be a Boogie Man」にはマイルス・デイヴィスの物憂げなクール感を持ちこみ、「For the Roses」は鋭く力強く響かせている。こうして、本作でミッチェルは思い出やノスタルジアを探っているが、そこに過去への後悔の色はまったく見られない。(Lucy O'Brien, Amazon.co.uk)
ゴージャスなセルフカバー
★★★★★
ジョニ自身の曲をオーケストラでセルフカバーした二枚組みアルバム。さすがにジョニです。単なるセルフカバーとは次元が違います。歌唱は円熟したジャズボーカルのようだし、壮大なオーケストラに一歩も負けてない。椎名林檎の平成風俗とはえらい違いだな。ジョニの名曲を違うアレンジで聞けるのも嬉しいです。ちょっとゴージャスすぎて聴き疲れするところもあるのですが、まあ贅沢な疲れです。これを最後に引退するって言ってたけど今年素晴らしい新作を届けてくれて、よかったよかった。
Joniの歌唱は素晴らしいが...
★★★★☆
前作"Both Sides Now"に続く豪華なオーケストラをバックにした演奏集である。今回は前作と異なり,Joniの過去の名曲群を歌っており,選曲としてはほぼ文句のないものとなっている。Joniは以前よりも随分と声質が変化しており,現在はベテラン・ジャズ・ボーカリストと言っても通用しそうな声で歌われるこれらの名曲を聴けることは,長年のファンにとっても楽しいものである。しかし,本作の評価を分ける鍵はバックのオーケストレーションにある。確かに豪華な伴奏であるが,これが本質的にJoniの音楽にフィットしているかについては疑問があるし,少なくとも筆者には過剰に思える。たとえDVD作品"Painting with Words & Music"に見られたようなシンプルな伴奏であろうと,Joniの曲は十分輝きを放つはずである。Joniはこれを最後のレコーディングにすると語ったとの情報もあるが,この作品をキャリアを総括する最終作として欲しくないというのが正直なところである。