ディラン+ソウル・R&Bの好企画盤
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UKの懐メロレーベル、エースのソングライター・シリーズのボブ・ディランの楽曲集です。とはいっても、ディラン自身が録音に関わったものではなく、黒人アーティストやミュージシャンが解釈したカバー集という、今までありそうでなかった企画です。
歌詞の内容に重きが置かれるディランの70年代はじめまでの曲(最後の曲だけ80年代)とソウルフルな感情表現が優先する歌声は、フォークやロックとソウルやR&Bの接点の薄さからすると意外な組み合わせと思いきや、実はディランの歌詞には市井の人々の生活に寄り添ったりするものが多いことやディラン自身の宗教感に黒人が共感するものがあるのを感じさせてくれます。
歌い手は、O.V.ライトからハワード・テイト、マリオン・ウィリアムズ、ソロモン・バークといきなり怒濤の顔ぶれで、ネヴィル・ブラザーズは神々しいまでの響き、ステイプル・シンガーズ、ニーナ・シモン、アイズレー・ブラザーズといったディランを歌っても不思議でない人たちから、コン・ファンク・シャンやパティ・ラベル、ブッカー・T・ジョーンズといった意外な顔ぶれまで揃っています。ジミ・ヘンドリックスの曲はこの編集盤に取り上げるのを却下されたことや、オーティス・レディングがディランを歌おうとしたというエピソードも盛り込んだライナーノーツもエースの仕事らしく丁寧に記されております。
ここでは収録されなかったディランのあの曲この曲のソウルフルな解釈もまた聞いてみたいと期待させてくれる、面白い一枚です。