１９７８年製作。英国の“怒れる若者”世代の奇才カレル・ライス（『土曜の夜と日曜の朝』『裸足のイサドラ』等）が「平凡なアクション映画を撮った」と、批評家筋からは公開当時総スカンを食った作品。しかしこれは、この映画が作られた７０年代末からわずか数年前の時代のことを描いたわりには、極めて透徹した視線で米国社会を見つめているユニークなアクション・ドラマの傑作というほかはない映画だった（高校のとき、同級生でこの映画を見た奴が「つまらなくて眠っていたと」と言っていたが、こんなに興奮する映画のどこで眠れるか不思議に思ったことを懐かしく思い出す）。秀作が連発した第二次ベトナム戦争映画ブーム（「ディア・ハンター」「地獄の黙示録」等の頃）の陰に隠れて、日本での興業成績もあまりぱっとしなかったことにより、今や一部熱狂的なファンによりカルト化している伝説の一本だ。何よりこの映画、「米国はベトナムを経てドラッグが残った」という巨視的なとらえ方が今見ても相当に鋭い。戦友から頼まれた危険な仕事に、映画デビューしたてのノルティがひと肌脱ぐ話だが、男の意地で仕事をやり抜く主人公の心意気で一気に最後まで見せるところは良質なハリウッド製アクション映画そのものの味だ。しかし途中、友人の夫人（６０年代に大ブレークしたチューズデー・ウェルドが好演。この女優さんがどれぐらい人気があったかは、スティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンが自身のソロ・アルバムの一曲の中で紹介していますね）が神経的にまいってドラッグにおぼれるエピソードなどの数々が通常のアクション映画にはないリアリティを添え、得体の知れない人物たちからの逃避行という展開が当時は余り作られていなかった陰謀ものの香りを全編に染み渡らせている。山間部での人質戦は、古典映画の数々の名場面を彷彿とさせるスリル場面だ。終盤のサーチライトを使った銃撃戦は新機軸で、銃器マニアによれば、この映画ほど「Ｍ１６ライフル」のメカを正しく描いた映画はないそうだ。劇中流れるブルース・ロックの大家、ＣＣＲ（クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル）の数々のヒット曲も雰囲気にピッタリマッチしていた。ちなみにこの映画のオリジナル・バージョン「Dog Soldiers」が映画祭に出品された際にはＣＣＲの音楽は入っておらず、余りに評判が悪かったので編集をしなおしＣＣＲのヒット曲の題名である「Who'll Stop the Rain」にタイトルを変えて北米では公開されたという経緯がある。上映時間１２６分。カラー・ビスタサイズ。例によって価格が高いわりには商品情報があいまいな紀伊國屋商品ゆえ、なぜか「ＨＤマスター」などとうたっているものの、早急に手を出すのは若干の不安がある。北米盤は遙か昔に２００１年にＭＧＭより発売されている。日本盤もちゃんとハリウッド・メジャー・スタジオ系のソフト会社から、北米マスターのものを、まっとうな価格で出していただきたいものだ。

よもやリリースされるとはただし作品としては・・
アクションなのかドラマなのか 設定はいいのに どっちつかずの中途半端なんですよね
ノルティはカッコイイです特にクライマックスのくだりはしびれるくらいカッコイイです
ローレンスローゼンタールの音楽もいいですね