ヴィヴァルディのバイオリン協奏曲から、今まで知られていなかった6曲を初めて収録した、驚愕のレコードである。これらの作品がなぜ知られていなかったかというと、いずれもヴィヴァルディが金持ちのパトロンから依頼されて作った自家用だからである。彼の円熟期に書かれたこの6曲は、大量生産的な趣きのある前期のコンチェルトとは、かなりスタイルが違う。一応は型どおりの3楽章構成で反復旋律も多いが、前期と比べると意外性があり、ドラマチックで、大胆である。ムード、特性、表現がいきなり変わって、鮮やかなコントラストを描き出す。形、ハーモニー、構造で思いきった冒険をしている。緩やかな楽章はうるおいに満ちて美しい。細部でも、全体でも、1つとして同じ効果の曲がない。まるでばらばらに聴こえる楽章は、炸裂するバイオリンが際立たせる多彩なモチーフのコラージュなのだ。
演奏も型破りである。ジュリアーノ・カルミニョーラは、これまでのヴィヴァルディ同様、自在さと活力と豊かな表現力で、名演奏を聴かせてくれる。急展開のソロ演奏では、しばしば最高音部まで登りつめる。トリル、ダブルストップ、アルペジオ、息を飲むスピードと技の切れ、自由で確かな弓の動きと明快なリズム、優美で力強く、変幻きわまりない音。ハープシコード以外の管絃楽器は通常の音程に合わせていて、ほとんどバロックには聴こえない。情熱的で変化に富んだ音である。指揮のアンドレーア・マルコンは2台のハープシコードと1丁のリュートで、銃声に似たパーカッション効果を作りだしている。豪華さと叙情と興奮が交々にやってくる演奏である。(Edith Eisler, Amazon.com)
薄味かな。
★★★☆☆
カルミニョーラは、有名なヴィヴァルディの《四季》が発売になって初めて知りました。数多くのコンクールで優秀な成績を収めているようですね(ただし、モダンヴァイオリンですが…)そんなカルミニョーラの「世界初録音」が売りのヴィヴァルディ、後期ヴァイオリン協奏曲集。全体としては、(バロックの第一印象として普通かも知れませんが)少し薄味なように感じました。音が軽い、という風におっしゃる方もいらっしゃるようですが、逆に言えば、この軽さや素朴さが古楽器のいいところではないかと思います。ヴィヴァルディも《四季》に現れているような一般的?なバロックよりも少しロマンチックに、より洗練された印象を受けます。都会っぽいとでも言うのかな。でもやっぱり初めて聴く人にはちょっと印象が薄いかな、と思って★★★☆☆とさせていただきました。ただ、噛めば噛むほど味が出る、そういった作品ではないかと、個人的には思います。
美しいバロックバイオリンの音色
★★★★★
1発目のハ長調からバロック・バイオリンの美しい音色が炸裂です。
ガット弦とスティール弦の音色ってこんなに違うものなんでしょうか...。
当然演奏者の「腕」があるんでしょうが、
僕には違う楽器のように聞こえます...。
彼がインタビューで言っていた自由...、
テクニカルに言うとヴィバルディって楽譜にフォルテかピアノしか指定していないそうです。
ベートーベン以降、これでもかって色々な奏法上の指定がありますが、演奏者としては挑戦しがいのある反面、堅苦しさを感じるんじゃないでしょうか...。
ジュリアーノさんの演奏は、自由を「満喫」するだけに、個性的で他の演奏者とは違った演奏が聴けます。
往々にして個性的な演奏は音楽的な見識を疑うものが多いですが、カルミニョーラさんに限ってはまったくそんなことはなく、心が沸き立つという表現がぴったりな高揚感を感じさせてくれます。