因習に凝り固まるフランスの小さな村に、不思議な雰囲気を漂わせる女性ヴィアンヌとその幼い娘が現れ、チョコレートの店を開いた。その美味しさに、禁欲を強いられている村人たちは驚き、戸惑いつつも少しずつ心を開いていくのだが…。名匠ラッセ・ハルストレム監督が贈るファンタジックなヒューマンドラマ。
程よい甘味な誘惑は人生にうるおいを与えるスパイスになり得るというテーマさながら、画面いっぱいに並べられるチョコレートの実に美味しそうなこと。また、長い歴史の中で迫害されつつも生き延びてきた、流れる民の悲哀もきちんと押さえられているのは、さすが名匠の巧まぬ技。ヒロイン、ジュリエット・ビノシュをはじめキャストの好演も忘れられない。ジョニー・デップのファンには、ギター生演奏シーンというお楽しみもあり。(的田也寸志)
人生の放浪と到達の狭間、そこに在るチョコレートの味
★★★★☆
「人生は変えることができる。自分をがんじがらめにしないこと」
「ハリウッドのセレブな女優たちが羨む女優、ジュリエット・ビノシュは『ショコラ』の中で、チョコレートの行商をしている家に生まれた女性ヴィアンヌを演じている。
彼女は娘と共にフランスの小さな村でチョコレート・ショップを開くが、村長に疎まれて村を出ていくように迫られる。
「ヴィアンヌは放浪者で、ひとつの場所に留まることが出来ない。でもそれは必ずしも本人が望んだ人生じゃないと思うの」。
ジュリエット・ヴィノシュはそう打ち明ける。
「だけど自分の中である種の習慣になっていて、それを破ることができないのよ。彼女の悩みは、みんな共通なものじゃないかしら。子どもの頃から続いてきた人生と、今こうなりたいと願う人生。誰でも苦しんだ経験があるはずよ。親の束縛や過去から自由になって、自分自身の人生を送るために」。
映画では、村を出ていこうとするヴィアンヌを、娘が思い留まらせる。
そして、村の女性達の友情やジョニー・デップ演じる恋人のルーの支えのおかげで、母娘はここに根を張って生きていこうと決心するのだった。」
ジョニー・デップのジャンゴ・ラインハルト
★★★★★
映画は2000年12月15日リリース。『チョコレート』を武器にいわゆる敬虔な信仰の村と対峙し、段々に受け入れられていくジュリエット・ビノシュ主演の映画。彼女はイングリッシュ・ペイシェント(1996年)で、第69回アカデミー賞 助演女優賞を受賞している。彼女は1964年3月生まれなので、1963年6月生まれのジョニー・デップとは日本で言うと同級生ということになる。
この映画、ジョニー・デップは完全に脇役で後半から登場するのだが、ドブロ・ギターを披露してくれる。弾く曲はなんとあのジャンゴ・ラインハルトの『マイナー・スイング』だ。ステファン・グラッペリとの1949年ローマ録音を知るギター・フリークにはドキッとするほど魅力的だ。ギターはかなり上手い。役を選ぶデップであるからしてこのシーンが気に入って引き受けたのでは、と思う。
すばらしいシーンの連続。心に残る一品です。
大人のお伽話
★★★★☆
厳格に節度を保ってきた街にふらりと現われたジョセフィーヌ。彼女とチョコレートは人々に波紋を投げ掛け心を溶かしてゆく…。
始めはアメリのような幸せ悪戯話かと思っていた。挿入される語りも画面の色もお伽話みたいだったから。
しかしこちらは少し現実に近いお伽話。
ジュリエット・ビノシュは『トリコロール/青の愛 』でいい女優だと思ったがやはりいい。悲しみも影も色んな人生を含んで、そして悪戯っぽく笑えるような。少女と何もかもわかってる大人の女性を同時に画面にだせるひと。すごい。
このストーリーに深みを与えている。
ジョニー・デップは期待したほど出てこなかったが魅力的だった。「ボート生活をする流れ者」なんてそれっぽすぎたけど。
あと、ジョセフィーヌの娘、アヌーク役の子は多分『ポネット』の子だが、あの少し憂える柔らかく濃い色の瞳が良かった。
ストーリーは終わってみれば凡庸だったし単純かもしれないが展開に心ひかれ、何度も解放されるような感じがした。
きっと役者にずいぶんこの作品は助けられている。ジュリエット・ビノシュを筆頭にして役者が良く、話をうまく安っぽすぎないお伽話にしていた。
変える人と変わる人
★★★★★
相変わらず後味のいい映画をとる監督だ。
肌がそそけ立つような寒風と澄んだ空気を思わせる映像は、やはり自国を意識してのことなんだろうか。
『ギルバート・グレイプ』決して嫌いじゃなかったんだけどいや好きだったんだけど『マイライフアズアドッグ』とどうしても比べてしまうと、米国に来た事を少し失望していました。なので『サイダーハウスルール』にもどうしても触手が伸びなかった。どうして『ショコラ』を見る気になったのかな? たぶん空気がひんやりとした映画のような気がしたからだろう。『サイダー』はあと2,3度気温が高い気がする。
ジュリエット・ビノシェがいつのまにか老けてて驚きましたが、あの役には適任なんでしょうか。少し疑問。ジョニー・ディップと言いギラギラしすぎなんじゃないかって気もしますが。
私的にはこの作品の主人公は、村長の伯爵そしてキャリー=アン・モス(『マトリックス』との違いにびっくりだ)演じるジュディ・ディンチの娘なんだけど、彼らは旧体制の代表として描かれている。伯爵は変革を嫌い、彼女は失った夫の代わりに息子を厳格に育てる。
しかし、彼らは変わる。変化を受け入れる。
映画の主人公として設定されているのは「変える人」なのかもしれないが、私には「変わる人」の魅力が輝いて見える。変わるとは何と勇気のいることなのだろう。
そして「変える人」であった人々も最後には「変わる人」となって映画は終わる。スクリーンに登場した全員が変わるのです。
これをおとぎ話と言ってしまえばそうなのかもしれない。でも力強いおとぎ話は、ドキュメンタリーよりも真実だ。
戒律と葛藤
★★★☆☆
この村の戒律(キリスト教??)で断食期に引っ越してきたチョコレート店。
チョコレートにまつわる欲求と葛藤を描いた作品だが、いまいちどういったものかが分かりませんでした。
知識がある程度ないと馴染めず終わってしまうかもしれません。
映画全体の雰囲気は一度旅行してみたくなるような素敵さがありました。
観ているとチョコレートを食べたくなりますね。
10点中5点!!