制御理論を学んでいるとプラントのモデルは既知として扱われることが多いが，実際にはモデルを決める（同定する）必要がある．この本は，離散時間型の動的システムのモデル構築をデータに基づいて行う手法（パラメータ推定）を上手く解説している．特に，第３，４章で未知パラメータを含んだモデルの説明がされている．第５章以降は，最小二乗法，相関法，予測誤差法，正準変量解析法といった具体的なパラメータ推定の方法が説明されている．モデル選択手法については，第８章の正準変量解析法のところでAICが記載されている．
　実は，第２章で推定論（手法）の概略が先立って述べられている．けだし，第５章以降を理解するたの準備としたと言えるが，自分でノートを整理する時には，５章の前か中に入れしまうと頭がすっきりするかもしれない．
　この本ではきちんと記述されていないが，行間を読むと（あくまでも想像），システム同定ではモデルの枠組みの概念（確率システム）と推定問題（特に最尤法で統一的に扱える）を奥深く意識することが大切であることが窺える．この書の続きとして位置づけられる『システム同定（部分空間法からのアプローチ）』を読むためには，この本で先立って頭を整理をして未解決問題を意識しておくと良いのではないだろうか．