多くの日本人が知らない国。
★★★★★
世界でも貧しい国として知られているカリブ海の小国ハイチを、’88年から’07年までの、ほぼ二十年にわたって、ホォト・ジャーナリストの佐藤文則氏の目で捉えた記録である。
本書では、貧しい人が多く暮らしている地域で友人となった人達との交友を書きながら、この国が抱えている苦悩を語っている。
著者が危険な地域で生活している友人たちの安否を知りたいがために何度も現地を訪れていたのは、ジャーナリストとしての興味だけでないことが本書を読んでいてよく分かった。
ラテンアメリカで初めての黒人独立国家であるハイチ共和国が、何故今日までこんなに貧しいのか?
多くの日本人は、この遠い国ハイチの現実を知らないと思うから、ハイチという国を知りたい人にはお勧めの一冊です。
ハイチ人と向かい合った20年
★★★★★
ハイチを知ろうとする者には、後にも先にも佐藤文則氏の著書は外せない。
軍のクーデター、米軍の上陸とハイチの歴史が大きく揺れ動いていた90年代、私は滞在するアメリカで雑誌のハイチの記事を集めていた。今思えばその中には佐藤氏の写真もあったかもしれない。ハイチの写真には説明できない不思議なパワーがあった。それは佐藤氏の言葉を借りれば「『楽園』と『地獄』−相反する二つの世界」から生まれるものであったのだと思う。それらは私がこれまで見たどんな国の写真とも違っていた。
ハイチの写真が放つ不思議なパワーは今も変わらず佐藤氏の写真の中に存在する。人々の表情の中には「貧困」と「たくましさ」が、風景の中には死と隣り合わせの過酷さと同時にリアルな生活感とあふれ出る生命力が共存している。
なぜハイチなのか。そしてこのハイチ人とはどういう人たちなのか。その答えを見つけるための20年近い旅の記録がこの本には詰まっている。ハイチの主人公は庶民である。