皮肉屋なら、いったい何種類ビーチ・ボーイズのベスト・アルバムを出せば気が済むのかという疑問だけで終わってしまうかもしれない。しかし、皮肉屋でない人々なら、『Sounds Of Summer』ならではの特色を高く評価するだろう。バンドのキャリア全体からここまで幅広い選曲がなされているにもかかわらず、ディスク1枚にまとめられているというベスト・アルバムは本作が初めてだ。1962年の「Surfin' Safari」から1988年の「Kokomo」までを網羅。30トラックすべて(数回にわたるレーベル移籍をはさむ)がビルボードのトップ40入りしており、いまやラジオ、テレビでおなじみの国民的愛唱歌となっているので、誰でも知っている曲ばかりというわけだ。トラックの並び方が年代順ではない点は、新鮮なリスニング体験にひと役買っている。パリッとしたデジタル・サウンドとなっている点も同様だ。
それにしてもこれらの曲は――40年以上の歳月を経ているものもあるが――いつも奇妙に新鮮に響く。海辺、若者たち、自由と夢を象徴する季節がある限り、それは変わらない。つまり、『Sounds Of Summer』というアルバム・タイトルには「広告の真実性」があるのだ。それぞれのアルバムに手を伸ばすところまでいかないという気軽なファンに打ってつけの本作は、伝説のバンドであるビーチ・ボーイズの芸術を的確に伝えており、「キング」の姿をしのばせる『ELV1S 30 #1 Hits』や「ファブ・フォー」の仕事を総括した『The Beatles 1』といったベスト・アルバムより上出来といえる。(Bill Holdship, Amazon.com)