夫の妻である前に、父親の娘、ヘッダ・ガーブレル。
★★★★★
何とも複雑で二面性を持ち矛盾した性格で、将軍であった父親の娘としてプライドは高いが、嫉妬も人一倍強い女性、ヘッダ・ガーブレル。妻であっても名字はテスマンではなく、どこまでもガーブレルがそのまま似合う。古今東西の近代社会のブルジョアにありがちな雰囲気のぷんぷんする女性だ。全4幕の戯曲だが、後半3幕の終盤、胸のポケットにピストルを突っ込み、ありがとう!と言ってヘッダの家から去るエイレルト・レェーヴボルク。その直後にストーブの口を開け、包みの中の物を「あんたの・・を焼いてやる、あんたの縮れっ毛も一緒にね!」と引き裂いて火にくべるヘッダは恐ろしい。4幕の最後には自宅で皆がいる部屋のカーテンの奥から銃声が・・。特に後半・終盤は引き込まれる。1891年ミュンヘンとクリスチャニアで上演されて既に119年。今般2010年9月26日(日)午後1時、新国立劇場・小劇場の公演に行った。備忘録としてその時の配役を。ヘッダ=大地真央、テスマン氏=益岡徹、レェーヴボルグ氏=山口馬木也、ブラック判事=羽場裕一、エルヴステード夫人=七瀬なつみ、女中ベルテ=青山眉子、テスマン氏の叔母=田島令子。原作に劣らずとても良かった。
基盤の無い個人主義の悲劇
★★★★☆
テスマン氏の口調がうざい事この上ありません。
けれども、これはおそらく原文にも似たようなニュアンスで
しゃべっているでしょうね。
ラスト近くでこの口調を皮肉で
テスマンさんに話しかけるエッダのシーンもありますし。
退屈で何のとりえもない、家がらを鼻にかけた女性、エッダが
夫を馬鹿にし、成功したかつて自分を愛してくれた男とその妻に嫉妬して
謀略をしかけるお話。
そしてその結末は残酷。
エッダの行動はやりすぎで、人に対する態度も尊大なんだけど
何のとりえも生きがいもない女の孤独感がよく出ています。
そして結末近くで周囲の人間が掌を返したように
彼女の存在に気を使わなくなる。
因果応報、人間関係の残酷さがよーく出ています。
大正時代によく上演された演劇で、エッダというキャラも特異なキャラと
話題になっていますが、近年では忘れ去られた感のお話。
他にも個性の凄いキャラが増えている所為かな?
え?
★★★☆☆
この岩波版の日本語訳を良いという方が多くいらっしゃるようですが、
私は台詞(特にテスマン氏の)中に頻繁に使われる「え?」という
言い回しが非常に鼻についてイライラしましたね。え?
日常会話の中で何か言ってから「え?」と念を押すことってそんなに
ありますかねぇ?え?
以前、他の方の訳で同じイプセンの「人形の家」を読んだ時はこのような
言い回しはなかったと思うのですが。え?
作品そのものは優れた作品だと思いますが、翻訳ものでここまでイラついた
ことは、はじめてですよ。え?