最近のアカペラものと比べると、時代が時代だけにアレンジと録音の古さを感じます。
でも、老舗だから勉強したい人は聞いておくと良いでしょう。わー、と鳥肌の立つような感動はありませんでした。

1970年代に活躍したザ・シンガーズ・アンリミテッドのハーモニーに魅了されてきました。聴き始めて30年以上の歳月が流れましたが、大好きなグループですからいろいろと引っ張り出しては聴いています。今聴いてもとてもオシャレで新鮮な香りがするのは音楽の質の高さによるものだと思います。

女声1人、男声3人のグループですが、多重録音を用いていますので、とても複雑な音楽で構成されており、それが深みと潤いを与えています。実際のステージでは聴けないという珍しいグループですから、その活動も音源を介してとなりますが、21世紀になってもこのように聴くことができることを考えますと、全力で録音にあたったからこそ値打ちがあるのです。

本アルバムは、過去のアルバムから選び出したものですから、録音年代は、1973年から1981年と幅広いです。演奏の水準は一定に保たれていますし、ジーン・ピアリングのアレンジの巧さで古さは全く感じません。

日本では、ハイ・ファイ・セットの歌唱でヒットした「Feelings」の上品な響きと哀愁を誘う歌い方は別格でしょう。
アントニオ・カルロス・ジョピンの作ったボサ・ノヴァの名曲「Wave(波)」の冒頭の複雑なハーモニーのア・カペラを聴くたびに、このグループと出会って良かったと思います。原曲の良さを崩すことなく、大人のジャズ・コーラスの魅力を如何なく発揮した演奏でした。
キャロル・キングの歌った1970年代初頭のヒット曲「You've Got a Friend(きみの友だち)」も懐かしい選曲です。
ラストの「We've Only Just Begun(愛のプレリュード)」は、カーペンターズの名唱でお馴染みの曲です。冒頭のユニゾンの美しいこと。筆舌に尽くしがたい巧さです。しっとりとした音楽からハッとするようなハーモニーが立ち上がります。