読み物としていいです
★★★★☆
著者のかたが元自衛官のため、その経験からくる裏付けの元で書かれています。
実際に著者が触ったことのある銃と比較し、89式の素晴らしい点や駄目なところを的確に指摘しています。
前制式の64式小銃の構造的欠陥などについても語っていますが、なかなか面白いことが書いてあります。
銃そのものの批評のほかに、市場原理の働いていない兵器調達や平和ボケからくる運用上の問題など、銃の設計思想の背景を著者なりに考察しています。
64式小銃についての記述では、文脈に現場の人間としての心苦しさがにじみ出ています。
64式小銃そのものの批判ではなく、それを作った人たちを痛烈に批判しています。
「銃を全然わかっていない」と。
面白いのは射撃訓練の解説で、その様子が事細かに解説してあり、いかに自衛隊が(お金がないから)弾を撃てないのかわかります。これが第1章となりますが、読み手を引き込むのに十分なイントロです。
値段は少し高めですが、自衛隊の提灯記事みたいなものでは全くなく、値段の価値はあると思います。
(ちなみにこの本の内容をダイジェストにした感じの俗っぽいコンビニ本が出ていますが、それも同じ著者が書いていますので、それなりに面白いです。)
自衛隊現用の小銃を良くここまで公開されましたね。
★★★★★
正直驚きました。
中の写真には「マルイ製」や「キャロット製」は1つも無く
すべて実銃のものばかりです。
自衛隊広報部の協力もあって迫力のある内容となっています。
特に89式は現用の軍用銃という事もあり情報の多くは
「憶測」「推察」の域を出ないものがほとんどで
実体は中々余人の知ることの出来ぬものでした。
その秘密のベールをいきなり引き剥がしここまでの内容を
発表されただけでも十分な意義があると思います。
その内容自体も実際の使用感によって書かれているため
その説得力の度合いが違います。
また各種の銃との実射比較もされた上での評価なので
客観性も十分あると思います。
射撃訓練の次第や銃の使用法、調整法、また装備なども細かく記載されています。
銃の補助となる官給の装備品は種類などがあまり無いため
私物購入の装備が多いと言うのはさもありなんと思いました。
他国の銃の評価ですが作者様の別著の「世界のGUNバイブル」の内容と
多少被っているものもありますがこれは仕方ないでしょう。
欲を言えばもう少し機械的な詳細や分解図、開発経緯などがあると
なお良かったのですが「自衛隊の現用」であることを考えると
出来る情報公開を考えればこれで十分すぎる内容かもしれません。
ミリタリーファン、サバゲファンのみならず
実際の隊員の方々にも参考となる一冊なのではないでしょうか。
以下は余談ですが
デリケートで乱暴には使えない「だろう」と言われてきた事に対する回答でしょうか
訓練等で隊員の方々とも結構泥まみれになった銃の写真が掲載されていますのが印象にのこりました。