1990年代の“ロックな女たち”のムーヴメントは、『Dry』を地盤として生まれた。ルー・リードがヴェルヴェット・アンダーグラウンドについて語ったときの言葉を借りるなら、「それほど大勢が買ったアルバムではないが、買った人々はバンドを組んだ」というわけだ。本作の魅力は疑いようがない。ブルージーなリフが、パンク・ロック的なエネルギーに乗って、静けさの中にいきなり押し寄せてくる。ハーヴェイの必死の歌声が、疲れ果てたうめき声に変わっていく。彼女がこれほど執着するものとは何なのか？ それは、ストーンズ的な意味での愛と希望、みだらな夢想、そしてセックス、セックス、セックスだ。聴いていて心地よいとは言えない「Oh My Lover」や「Joe」で、ハーヴェイは胸の内のドロドロしたものを大声でぶちまけるが、決してウィットを忘れてはいない。その証拠に、「Sheela-Na-Gig」では、こんな呪文が繰り返される――「あの男を髪から洗い流そう／このお尻はかまってくれる人に回そう（I'm gonna wash that man right outta my hair / I'm gonna take my hips to a man who cares）”。（Bill Crandall, Amazon.co.uk）