キャッシュフローとは、文字どおり経営におけるお金の流れの全体像のこと。著者によれば、利益目標から逆算し、人件費など固定費の構造を分析し、目的ごとにきちんと予算化していくことがキャッシュフロー経営のポイントだという。入ってくるお金と出て行くお金のバランスが妥当かどうか、問題があるとすればどこから手をつけて改善をすればいいかを日常的に意識する。最終的にはそんなシナリオをオープンにすることにより、スタッフ一丸となった目標達成が可能になるというわけだ。
いうまでもなく本書は、直接の読者対象として想定されている歯科医以外の業種の経営にも大いに参考になる。随所に読者みずからが書きこむ欄を設けたワークブック形式になっており、読んで理解する本というより、実際に使いこなすツールというスタイルがとられているのもユニークな特徴だ。キャッシュフロー経営は、あくまで「お金にしばられない」経営を実現するための手段にすぎない。目指すべきビジョンの実現という原点に常に立ち返って読み進められるような構成上の工夫もこらされている。(松田尚之)