世界最高の手抜き技法。
★★★★★
絵がすごく手抜きである。
まったく感動的なまでの超手抜きだ。ネコが描いてるんじゃなかろうか。
赤塚富士夫が完成させた「手抜き奥義」の正当な後継者は彼だけだ。
なんというか、真面目に読もうとかそういった余計な情熱を1ページ目からそぎ落としてやるせない気持ちにさせてくれる。
38度くらいの微妙な温度の風呂につかって腐りつつある気分だ。もうどうでもいいや。
具体的に説明すると、
背景がない。
背景があることが稀なのでたまに描いてあると「あー、背景だー!」って感動できる。これは新しい。
地面がない。
地面がたまにしか描かれてなく登場人物たちが白い空間になんとなく浮いている感じがする。
だが別に気にならない。全体的にバランスが良い手抜きなのでどこか一か所の手抜きが気にならないのである。斬新だ。
時間が不明。
登場人物たちは夜なのか昼なのかもわからないファジーな時間世界にいます。
登場人物たちは、いきなり野外や屋内や街のどっかに瞬間移動するのですがクレムリンの世界は時空間が極めていいかげんなので
どんな演出上の無茶も適当に正当化されてしまうのです。小畑健が作画したら2コマもたないでしょう。
作者は実際には卓越した画力を持っているのだが、それをあえて抑制し「時間」と「空間」の概念すら放擲することで
ストーリー上完全なる自由を獲得している。
真面目すぎる日本人は是非これを読み、おおよそ勝ち負けなど存在する余地もないテキトーな世界に身を置く真の勝ち組になるべきだと思う。
あと表紙のにおいが変です。買ったら嗅いでみてください。
久しぶりの怪作。3匹のネコにくすぐられる、笑いのたましい!
★★★★★
思い返せば大学生時分。吉田戦車『伝染るんです。』の終了後に、突如始まった高野聖ーナ『パパはニューギニア』。
笑いで引きつった下アゴを守るため、思わず雑誌から目を背けた、あの日の遠い記憶がよみがえる。
他誌の話ではありますが、カレー沢薫「クレムリン」。同様にアゴが砕けた一冊として、思わず読んでる途中に本を閉じました...。
読みながら、思わず口に出るツッコミは、「ワケがわからん」と「なんて非道い絵だ」。(これ、褒めています。)
「ワケわからん」のは、3匹のネコ・関羽を中心に、右へ左へと、笑いのたましいが揺さぶられるストーリー。
そして「非道い絵」なのは、おおよそ漫画家さんが描いたとは思えないほど毛むくじゃらでちんちくりんのネコ、そして、関羽に立ちはだかる筋肉モリモリのネズミ、など。
「もう! なんなんだよ!」と叫びながら、引きつり笑いが止まりません。
いわずもがな、ほしよりこ『きょうの猫村さん』や、横山キムチ『ねこだらけ』など、いまネコマンガには追い風が吹いています。
思うに、ネコマンガのなかで、ほのぼのネコマンガというジャンルがあるとすれば、本書は、ちくちくネコマンガ、あるいは、いじいじ・ひねひねネコマンガです。
どちらかというと、何かいい知れない不満を普段からかかえている方や、いつもちゃんとしすぎて逆に性格が曲がってしまった血液型A型の方(私か)におすすめします。
ある意味、頭ばかり使いすぎて疲れ果てた知的生産階級に、支持されるべきマンガだといえます。
とはいいながらも、表紙にあるとおり、どこか憎めない絵柄とストーリーです。
おそらく女性にも「可愛いぃ〜」なんて、喜んでいただけるのではないでしょうか。
(実際に見せたところ、「三角関係が可愛い」とか、好評でした。)
「モーニング」誌で連載されているので、毎回読むのも楽しみです。が、特に初めて知った読者の方には、単行本の購入を強くおすすめします。
一気にまとめて読まれたほうが、「ストーリー間のジャンプ率」が高く、ジェットコースター的感覚で、たましいが揺さぶられることでしょう。
あえて難点を申せば、とても手が込んでいる本書の装幀は、書店で見つけるには地味であり、在庫があってもうっかり見落とす恐れがあるということです。
私の場合、書店を巡って6店目で、ようやく手に入れることができました。
そういうドラクエの宝探し的な遠回りをしてでも、本書は、出会えてよかったと大満足できる作品です。 おそらく...。
わかる人にはわかる…
★★★★★
下手絵だが、面白い、このセンス、賛否両論だと思われるが、僕はハマりました。
ある意味でネコマンガの最高峰
★★★★★
モーニング本誌の方で見かけ、ただならぬ「味」に惹かれて、ついつい購入。
そして現在、すっかり虜になってしまいました。
「クレムリン」というタイトルだけを聞くと、なにやら難しそうな政治系の書籍を連想してしまいますし、実際に無関係というわけではないようですが、基本は猫マンガです。
世にも珍しい6コマ漫画という形態ですが、それよりも特筆すべきは、独特の脱力系のタッチとストーリーです。
ストーリーは主人公の青年が3匹の捨て猫を拾うシーンから始まります。
ここだけを見ると、同じモーニングで連載されていた猫マンガの傑作「クロ號」と似ていますが、シュールなタッチとストーリー等、全くの別物です。(どちらも傑作!)
常に無表情で、一見冷酷そうだが、実は優しい好青年の主人公。
そんな彼は何故か猫語を理解する事ができ、何故か猫の大家が営むアパートに住んでいます。
同じく何故か人間語を話せるネコ達と遭遇し、寛大な心(?)でアパートに連れ帰ります。
この猫達も主人公同様に無表情なのですが、それなのに実に愛くるしくて憎めません。
何が起きても無表情だけど、何が起きても平然と受け入れ、ツッコミを忘れない主人公。
やはり常に無表情だけど、好奇心旺盛で、妙に人間臭くて人情があって、何とも可愛らしいネコ達。
そんな彼らが織りなすシュールなストーリーは、一度読めば虜になること間違い無し!
猫好きな人も楽しめると思いますが、単に笑える漫画を探している人にもお勧めです。
※くりかえし
★★★★☆
一読した後には「・・・アレ?」と思ったこの作品。
もしあなたもそう思っても、ため息と共にブックオフに持っていく前に、もう一度読んでみて下さい。さらにもう一度。そしてもう一度。
そうすれば、あなたはもう、この猫達を追い出すことはできないでしょう。
あまりにシュールなこの漫画は、一読するだけでは面白みが伝わらないかもしれませんが、何回も繰り返して読むと不思議な愛着が湧きます。