「臨床の基礎としての云々」と題する本は巷に多いが.これは基礎としての臨床です.
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この本はメランコリー型うつ病に関して書かれた大変有名な本である.だから,メランコリーに関してなにもレビューすることはないのだが,あえて私が特記したいことは,
1)「内なるもの endon」 を70頁近くにわたり議論している.
内因性精神病ということばをよく耳にすることがあるが,この「内因性」とは一体全体はなんなのかじっくり学びたい人へ格好の本と言える.メランコリー型うつ病にかかわる「インクルデンツ」と「レマネンツ」という特殊から「endon」さらには「endon-cosmos」へと一般化されていく.「内因性」の現象学ともいえる一章である.
2)躁鬱病も30頁近く解説している.
テレンバッハといえば「メランコリー」という図式ができてしまうほど,この本は有名だが,現在注目されている躁うつ病の「endon-cosmos」を学びたい人の要望にも答えてくれる.
ことである.
特に上記1)の章は特殊から一般,「応用」哲学(精神病理学)が「純粋」哲学の基礎をなす一場面とでもいう構造になっており,「人間存在の根源」の理解に寄与しているように思われ読み応えがある.こういう本を読んでいると,DSM分類などはいかに恣意性に富んだものなのかがよくわかるような気がします.
うつ病の世界一重要な著作
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この著作は、うつ病の構造を徹底的に探求しつくした世界的名著である。最近では、軽佻浮薄なアメリカ精神医学が幅を効かしているが、まったくこの著作に見られるような概念の明晰性、探求の奥深さを感じられない。非常に稚拙な概念、皮相な探求しかそこにはない。理論と実践の融合がなく、実践の独断になっている。これでは、患者の本質が捉えられず、上辺だけを改善するにすぎない。こんなものは精神医学ではなく、単なる処世術である。アメリカ社会のように個人が企業の歯車になって生きていくのが当然のような社会では、こういう精神医学が必要なのかもしれないが、わが国は違う。そんな奴隷みたいな人間に誰がなりたいだろう。アメリカ社会は、個人を営利性、実用性、効率性、などにおいてしか評価せず、決して美的、精神的には評価しない。そんなものは、生きる上において無用なものとして排除されるのだ。これは、アメリカがプラグマチズム、唯物論、実証主義の国だからだ。そこには、真の人間精神の哲学的探求がない。ドイツにおいてこそ、それは最高の域に達したのだ。この著作は、世界精神医学界にとって最高の著作であり、まさに世界一である!
うつ病研究の大著
★★★★☆
本書は非常に読みにくいが、うつ病を知る上では非常に参考になる一冊である。
特にメランコリー親和型について論じた第三章は一読する価値があるだろう