「超こわい話」本来の持ち味が良く分かる一冊です。
★★★★★
本作は「超こわい話」の創刊から携わる加藤一氏の作品を同書から抜粋してまとめたもので、内容・分量ともにボリュームがあります。
収録された加藤氏の怪談では、「身近な不思議な話」を題材とした初期作品が印象的です。「超こわい話」が読者の支持を集めた大きな魅力の一つ、身近にあった不思議な話を怪異として文章で紹介するというスタイルは当時大変に新しいものでした。現在でも模倣者が出ないことが、このスタイルの持つ「呼吸」の難しさを良く表しています。
また、狭山湖の夜を探検するオフ怪のエピソードからは、当時の読者層のマイナーさや、皆でこっそり怖いことを楽しもうという創刊当時の雰囲気が大変良く伝わってきます。
最近の怪談本のどぎつい恐怖譚や障りのある話、それもまた良いかと思いますが、何の気なしに見聞きしていた日常が実は不思議な体験だったという話や、怖がりながら作品の怪異に触れてみるという世界も、怪談を楽しむという観点から大切にしたいところです。
そして本作に詰め込まれた「超こわい話」本来の、節度を守って、なおかつ読者を怖がらせ楽しませようという姿勢で貫かれた作品群を、是非お手元に置いていただきたいと思います。
さすが加藤一だ。大したものだ。
★★★★★
平山夢明ベストに続き、満を持して加藤一ベストセレクション登場。ケイブンシャ版の「超」怖い話(1991−2000年)と竹書房「怖い」(2000年)から加藤氏の作をよりぬき、更に新作追加の構成となっている。長らくケイブンシャ版の復刻が待たれていただけに、こういう形でのリリースは嬉しい。おそらく竹書房ホラーでは今年一番の気合いの入りようではないかと思われるカバーデザインもまた秀逸で、プレミア感を演出している。
ところで最近の怪談本に関するレビューをネットで拾い読みしていると、陰惨な呪いや祟りにまつわる大ネタ系が歓迎される傾向にある。多くの意見の中心は「大ネタ=読みごたえ」に集約され、不思議系や脱力系の怪談を怖い・満足とみなす向きは決して多くない。
凄まじい陰惨系も得意とする加藤氏ではあるが、彼を語るにはこのベストセレクションに数多く収録された不思議系や脱力系の怪談の存在は欠かせない。漫画家・木城ゆきと氏が巻末の解説で加藤氏の作品「そーそーそーそー」に出会った時の衝撃を記していて、そこに旧来的な怪談と加藤怪談の違いを非常に明解な形で説明している。伝統的共同体から離れて暮らしているがために起こる違和感を、昔ながらの怪談に対する現代の読者の心情に照らし合わせているのだが、これが実に的を射た指摘なのである。熱心なファン心と冷静な分析が共存したこの解説は加藤怪談をより深く味わう格好のテキストとして、本編と同じくらいに大きな価値があると言えよう。
本書では名作「カボチャ」に代表される不思議系や脱力系以外にも、妖しい名倉君と巻田君の連作や江古田、東村山のローカル作など背筋に来る作品も充実している。市井との距離の密着ぶりが思いがけず恐怖を引き起こす瞬間を加藤怪談マラソンで体感してほしい。
すごいボリューム♪
★★★★☆
加藤氏の集大成だけあってものすごいボリュームです!
まだ全部読んでないんですけどナカナカの出来ですよ。
今は無き剄文社のエピソードもあったりしてファンにはたまりませんね♪
個人的にはレインコートの女がお気に入り★