壊れているから、完璧に機能しないからこそ、逆説的に自身の身体性を再認識する吉行氏の姿が垣間見えます。しかし、その視点は自分の身体の状況を憂う、というよりは、一歩退いて科学者が、解剖する実験動物を見つめるような、好奇心のような冷ややかさがあります。そこから過去の記憶へと飛んでいく意識の流れの突拍子のなさがユーモラスでもあり、どこか悲劇的でもあります。身体のつくりの精妙さと、何処までも無限に想念を拡げていくことのできる精神・意識の入れものとしての身体の限界性、そんなことを考えさせられました。あまり出会うことのないタイプの作品。
風変わりな面白そうな人がたくさんでてきます。
出会った人のことをこんなふうにうまく表すことができたら。
ほんの短い間の印象をいっぱいにふくらませることができたら。
きっととても難しいんだろうけど、自分にもできそうな、楽しい気分になりました。