すべての音に意味がある
★★★★★
無駄な音は一音もない。すべての音に意味がある。
という言葉を思い起こさせる名演である。
ダイナミックであり、かつ繊細な部分を見せることを忘れない演奏。完璧な技巧であるが、それを一切見せつけない余裕と意欲。
バラードではその自由奔放に紡ぎだされる音が時に激しく、時に繊細に、その両方を見事に両立させ、しかもバランスがとれている。1番のダイナミックさは圧倒的。4番の出だしは夢の中をさまようような、ショパンの晩年を感じさせる貫禄の名演である。
後半のマズルカと前奏曲はバラードと舟歌の中継ぎにピッタリでセンスが感じられる。舟歌は極めつけの録音といえよう。