運命のいたずらが微笑ましい。
★★★☆☆
村山由佳『遥かなる水の音』、大島真寿美『戦友の恋』、
伊吹有喜『四十九日のレシピ』、久保寺建彦『オープン・
セサミ』そして本書と読んできて、ほぼ同工異曲の内容
にやや食傷気味です。でもこれを想像力が痩せたと言っ
てはいけないと思います。
人生の節目、すなわち卒業や結婚そして出産での出会
いと別れ、また生死に伴う喪失と再生、それらに人生の
真実を見出していく志向は、文士の生活の周辺のみから
それを探すかつての文学から進化した、市民感覚のそれ
を感じるからです。
冒頭の五書の中では、意外性にあふれた男女の接近を
素描した本書が、いちばん読み応えがありました。
充実の恋愛小説集
★★★★★
ミステリー的な仕掛けも含め、設定や構成が巧みな恋愛小説の短編が5本。恋愛小説の醍醐味は、恋愛感情の芽生えの過程を丁寧に描き出していくことだと私的に考えている評者としては、その信念を十二分に満足させてくれる作品ばかりで申し分のない読書が出来た。すべて面白かったが、「交換日記はじめました!」「三角形はこわさないでおく」「吉祥寺の朝比奈くん」の3つが特によかった。たらい回しにされる交換日記がやがて思わぬ親密さを生んだり、三角関係の深化が恋心と友情とをともに成熟させていたったり、不倫一歩手前の関係性が本当に他ならぬ人への愛とは何かを熟慮させることとなったり、いずれも感動的であった。話の展開にぐいぐいと引き込まれながら、納得のゆく結末に感じ入り、そして自分もまた恋をし愛に生きることを願うようになる。色々と忙しいなか小説の読書に時間を費やしてよかったな、と心底おもうことのできる作品であった。
羊の皮を被った狼ならぬ、恋愛小説の皮を被ったミステリ
★★★★★
年末の本屋に足を運び、「今年の〜ベスト10」なる企画本を立ち読みするのが私の年行事である。
面白そうな本はないかな〜と思っていると、新刊コーナーに独特な表紙の本書があり、見つけたときは
クリスマスプレゼントをもらったような気持ちになった。それこそ今年のベスト本はそっちのけ状態。
即レジ直行。
中田永一。
某覆面作家と噂され、一作目の「百瀬〜」が非常に強烈な印象を残した著者の2作目である。
前回の表紙の真白とずいぶん印象変えてきたなぁと。
「FeelLove」という雑誌は恋愛小説誌であり、性別が男性な私は買いづらい雑誌であり
ちょっと大きめの書店でないと手には入らず、当然定期購読はしておらず、本書が出ることを私は
全く知らなかったのでたまたま見つけた瞬間はとても嬉しかった。
今回の5編も非常にユーモアと叙情性に富み、恋愛小説という肩書を一度はずして読んでみると
ミステリ小説の恋愛仕立てのような仕上がりでとても心地がよい。どれもすがすがしい小説である。
間違ってもドロドロ系や甘々系ではないし、どうやっても不倫を勧めているとも読み取れない。
(そういえば最近、興信所の問題がニュースになりましたね)
○○トリックを使ってくるよ、と身構えても引っかかってしまう著者の手際の良さ。
成分献血の話や、ランボーのビデオ、アラレちゃんからドラゴンボールになる所の話など随所に年齢相応に
引っかかってくる点があり、ニヤリとさせられた。
青臭い青春小説になりそうな展開なのに、そうはならない。
男女のラブラブチュチュー話にはならない。
学生時代や20代前半頃に誰もが一度は通ってきたであろう懐かしくも遠い記憶を
さらさらさらっと書きながら、ミステリ風にしあげた作品。
早くも3作目が読みたい・・・けどもう一度最初から味わってゆっくり読むのもいいかも。
こういうお話を待っていました。
★★★★★
意外な交換日記のお話。交換日記の響きが懐かしくてそれだけでノスタルジーな気持ちになりました。メール世代の今の子が読んで、そうか、交換日記楽しそうだななんて思ってくれたら、いいなと思いました。なんていうのか、交換日記をめぐる冒険のような話で、そこには意外な秘められた恋が・・落書きのお話もいいな、マッキーの描写が細かくて、大人になるとあまり使わなくなるので、まあ、そこも青春だ!と思い、腹の虫の冒険は、笑えました。表題作もミステリーチックでいけてるお話でした。初めてこの著者のお話を読みましたが、なかなかいいです。べたな恋愛小説よりも、ひねりが効いていて、個人的には大好きです。
好みによりますが。
★★★★☆
甘いばかりの恋愛小説が苦手な私にとっては非常に読みやすい作品でした。
コメディタッチで書かれていて登場人物達の会話に微笑んでしまいました。
恋愛小説ですが、甘い雰囲気は感じられないのでどっぷり恋愛に浸りたい方にはイマイチかもしれませんが、私にはこのくらいの軽さがちょうどよかったです。