表現の方向性に迷いがあるよう
★☆☆☆☆
ラ・カンパネラの演奏は最近メディアでよく取り上げられているようですね.
ショパエチュOp.25-4でも感じたことですが,彼女の特徴である離鍵の速さを
生かして,前半の右手跳躍などは独特の世界を作り出しています.
トリルや半音階での安定も,さすがです.が,終盤のオクターブから和音のところで
音が混濁してしまうのはこの頃からの癖で,後年も改善されていないのは残念.
また,ボリュームコントロールは甘いです(これは最近は改善されていますが).
エステ荘やペトラルカ104,夜会も表情に乏しく,その割りに不自然なところで
ルバートを入れたり,デクレシェンドしたりと,あまり感心しません.
超絶の2曲も,キーシン盤と比較すると,技術・表現とも見劣りします.
(これはキーシンが巧すぎというのもあるでしょうが)
ハンガリー狂詩曲は,演奏時間(10:28)から,どんなカデンツァが入っているのか
と思いきや,その直前で急減速してもったいぶっただけ.
それまでのフリスカはソコソコ軽快な佳演なので,そのまま突っ走ってくれた方が
自然だったのではないでしょうか.ラッサンはもてあまし気味です.
メフィストも全体として足取りが重く(特に冒頭),マツーエフやルガンスキーには
遠く及ばない感じ.
このCDは前から持っていて,初めて聞いたときから(期待が大きかっただけに)
印象は好くなかったのですが,改めて聞いてみると,やっぱりイマイチです.
それでも技術的に確かなのは事実で,後年の小山さんの活躍ぶりを考えると,
発展途上だったということでしょう.表現は荒削りでも,若いうちに技術を
徹底的に磨いてレパートリーを広げたことが,今日の活躍に繋がっているのでは.
小山美稚恵さんのラ・カンパネッラを観て
★★★★★
リスト:ピアノ作品集「ラ・カンパネッラ」
たまたまNHKの音楽番組 名曲探偵アマデウス(司会:筧 利夫)の再放送(リストの
ラ・カンパネッラの編)を視聴した時、単なる鐘の音を模しているに過ぎないと思っていた
このパガニーニの練習曲の焼き直しが、これほどまでに音楽的に奥深いものとわかり、大変感動するとともにこのときの演奏者が小山美稚恵さんで、あのテンポの速い部分をまるでピアノの鍵盤の上を蝶のように舞っていた白い手の動きに二度感動したことを覚えています。
このときの感動が忘れられず他の何人かのプレイヤーのCDと共に買ったのがこの一枚です。
願わくばDVDが発売されないかと心待ちにしています。(平成21年4月 キタムラ)