ノン・フィクションライターの原作を脚本にする。ドキュメンタリー映画ではないうえ、魅力的な
原作者がちゃんと生きている。そして原作者自身も迷い、著書のなかで結論を出していない。
これは著者が亡くなり未完成に終わった作品を脚本化するよりよほど話はこじれる。巻末の美人写真は
やさしい眼差しを投げかけ、脚本家は勝手な想像をする上、恋心まで抱く。
この脚本家N・ケイジが、メリル・ストリープ演じる原作者と恋に落ちていくのかとつい思うのだが、
スパイク・ジョーンズはそんな予想がつくような展開をさせない。
珠玉のドキュメンタリー・フィルムを、娯楽映画に使った例はあまりないのではないか。
蘭の映像も、生物が誕生し朽ち果てる映像も力強く、美しい。
変ったストーリーではあるけれど、相変わらず新しい脚本の流れの誕生を感じさせる。
とりあえずチェックする必要がある作品のように思う。