つぶれるべくしてつぶれたのか…?
★★★★★
山一の創業者小池国三の堅実路線が、中興の祖、太田収・大神一らによって否定され、逆に野村の創業者野村徳七の投機体質が、後継者らによって堅実路線に変っていく経緯が対照的だ。
著者は、太田・大神の”遺伝子”がその後の経営者に受け継がれ、平成の大崩壊に至ったと語る。
遺伝子とは社風、空気、といった意味だろうか。どこの会社にもありそうな病巣だが、山一の場合、思い切った外科手術を行う胆力のある社長が出なかった。胆力のある人は粛清された。
終戦時、山一は業界最大手で野村は7〜8番手だった。野村がのし上がってきても利益ではトップを譲らなかった。4社の最後尾しか知らない者には眩しいくらいだ。
それにしても山一はいい会社だった。潰してはならない会社だった。植谷久三以降の社長は万死に値する。
ただ、”遺伝子”を強調するあまり、しょっちゅう幕末との対比が出てくるのがちと煩わしい。
前半の歴史叙述にやや謝罪史観の臭いが感じられるのも難。
組織の意思決定のための反面教師
★★★☆☆
山一証券の107年の歴史、大正から昭和、平成にかけての金融界の歴史であり、それなりに得るものがありました。
ただ「遺伝子」や「家父長制」といった「こじつけ」がなければ、もっとすっきりと読めたような気がします。それらを「社風」と読み替えれば妥当なのかもしれません。
固有名詞が多く、また時系列が入り組んでいますが、会社という組織の意思決定のための反面教師が散りばめられています。
「日本経済の平家物語」
★★★★★
「東大にあらざれば社長になるべからず。」、「日本経済の平家物語」なのだそうだ。
これだけでも、ウケたなあ。
でも、ウチの大切な息子ちゃんには、社長になれなくてもいいけど、東大に合格して
ほしいな(?)。
山一を中心とした證券業界の歴史を回顧
★★★★★
太田収を基点とした滅びの遺伝子が、バブル崩壊時における営業特金の損失を導き、山一證券が破綻せざるを得なくなった推移を描いている。その他の大手証券会社は異なった遺伝子をもっており、その差が破綻との結果を分けた。
さらに、本書の価値は日本経済の歴史、證券業界の歴史の叙述にもあると感じた。日本経済・金融界の歴史を知る上での貴重な一冊ではないかと思う。