秀でた演技者としての教師像
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「1ねん1くみ せんせい、あのね」を読んだ時、こどもが持つ観察眼・表現力・感受性などなどその瑞瑞しさに息を飲む思いでしたが、あの素晴らしい詩が生まれてくる舞台裏を鹿島氏自らが明かした本です。こどもは人間の原型で、大人の導き方(故・灰谷健次郎氏のことばでいう沿い方)によって、キラキラと輝く存在になるということが示されています。ただ、そのためには、鹿島氏自身が演技者になりきっていること、演技者になることでこどもがどう変わっていくかを予め想像していることに、教師・鹿島氏の強かさが読み取れて非常に興味深い。こどもたちから そんなこと、せんせいがしてもいいの?というニュアンスの言葉が返ってくるほど凡そ教師らしくない教師を演じることを徹底します。また、特別な配慮を必要とするこどもに対する接し方にも言及しており、鹿島氏の考え方が浮き彫りになっています。「こんなおもしろいせんせいががおる」とか「学校って、おもしろいことがおこるところ」というイメージをこどもたちの根っこに植え付け、表現することで様々な交流を生み出し、表現することの喜びを覚え、その楽しい表現のためには、じっくり観察するという循環を作り出しています。この鹿島氏が実践してきた教育について、おそらくは賛同する人ばかりではなく、むしろ真っ向から反対する意見や、そこまでは出来ないという意見が多出すると推測しますが、生き生きとした生命が生き生きと育っていった何よりの証がここにあります。