インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

ピカレスク - 太宰治伝 (日本の近代 猪瀬直樹著作集 4)

価格: ¥1,470
カテゴリ: 単行本
ブランド: 小学館
Amazon.co.jpで確認
2人の大作家の「神話」を剥ぐ ★★★★★
数々の神話と伝説に彩られた井伏鱒二・太宰治師弟の実像を、資料の博捜によって炙り出すミステリー評伝。

小説仕立てだが、「真相」を明らかにするための資料解釈の手法は、むしろ学術的と言えるかもしれない。


太宰治の芥川賞への執着などは有名なエピソードだが、神聖視されがちな太宰の俗物性と自分勝手さをここまではっきり書いた本は少ないのではないか。特に太宰の度重なる自殺未遂の真実を、状況証拠と太宰自身の証言(すなわち自身の自殺未遂体験を基にした諸作品の中での記述)などから解明する手腕は見事の一言に尽きる。「何度も失敗した自殺に、最後には成功した」という通説を顛倒させる驚異の推理力には脱帽した。


井伏鱒二の創作の秘密も徹底的に暴露、井伏にとっての作家業は「身過ぎ世過ぎ」にすぎなかったと喝破する。その舌鋒は、ロクに検証もせずに井伏の描写力を手放しで絶賛した作家・評論家筋にまで及ぶ。井伏・太宰の師弟関係への洞察も鋭い。


また商売・ビジネスという側面から日本近代文学史を読み解く視点も興味深く、「文壇」の視野の狭さと底の浅さを浮き彫りにしている。
文学の悪徳 作家という偶像 ★★★★☆
これは、文学という毒にあてられた太宰治、井伏鱒二の、二人の軌跡をたどる猪瀬直樹の「私的な」作家評伝です。
社会の動向に左右される作家という頼りない仕事。二人は作家として生きるために、いかにしてこの、くえない世間にまき散らされた悪徳という毒にすがりついたのか。

 猪瀬氏は『井伏さんは悪人です』という太宰の唐突な言葉の謎を導きの紐として、そこに日本近代の軋みを見、日本文学史の狭隘さを重ね合わせて、作家という不可解な「存在」を紐解いていきます。
 作家の周辺や当時の時代状況も丹念に取材されており、読み応えは充分です。ぜひ一読を。

作家になりたかった ★★★★★
 ã"れまでの「ç'"粋すぎて」「弱くて」「ç"Ÿãã‚‹ã"とに耐えられない」などという太宰治のイメージからはかã'離れた、あるé'å¹'の姿が浮かび上がった。それは、作家になりたくて努力ã-、工夫ã-、å¥"走する野心に溢れたé'å¹'。正ç›'言って、太宰がそã‚"な人だとはつゆほども思わなかったので驚いたが、嫌悪感は感じなかった。彼が作家とã-て「売れたかった」というのはむã-ろæ-°é®®ã ã£ãŸã-、ナルシストぶりからもç'å¾-できる。ぜひ、太宰ファンにも、太宰嫌いにも読ã‚"でほã-い。
 また、太宰ã‚'知る人ã€...のエãƒ"ソードが盛り込まれてあり、彼らのç"ŸããŸæ™‚代にタイムスリッãƒ-ã-たような感覚に浸れる。同ä¸-代の彼らはすでに90歳にè¿'い人ばかり。è²'重な証言だろう。æ-‡ç« ã‚‚難ã-くなく、本の厚さとは裏è...¹ã«ä¸€æ°-に読み終えã!¦ã-まった。
太宰と井伏―二つのスキャンダル ★★★★★
読みかけていた「ミカドの肖像」(同じ著者)より先に読了。それも一気読み。太宰の心中死と井伏作品の二つの真相に迫ってとてもおもしろかった。

太宰についてはこれまでネガティブなイメージ(暗い、線が細いetc.)が先行したが、同人誌を主宰発行したり、芥川賞獲りに執着するなど“go-getter”で野心家な一面は初めて知った。さらに地主の息子のくせに社会に迎合しようと、プロレタリア風の作品を書いたり共産党活動を援助するなど、結構ミーハーで意外であった。

また「一連の自殺未遂はあくまで“狂言”で、太宰は本当は生きたかった(但し最期は相手の女性が一枚上手で逆にはめられた)」とする著者の説は説得力があり、案外真実ではないか。それくらいこの本の太宰はしたたかで自己本位で、私だったらこんなエゴイスティックな男とは付き合いたくない。一方で「だから魅かれる」人の気持ちも何となくわかるような気はするが。やっぱり太宰はアンチ・ヒーローなのだ。

そしてなぜ太宰は「井伏さんは悪人です」という遺書を残したのか?この謎に迫るべくサブ・テーマで太宰の師・井伏鱒二の人物と作品が掘り下げられ、教科書にものるほど有名な「山椒魚」「黒い雨」「ジョン万次郎漂流記」の創作秘密が暴かれる‥‥

実は私は、これまで太宰の本を“正式に”読んだことがない(昔、「走れメロス」を国語の授業か何かで読んだ記憶はある)。この本のお陰で彼の著作に興味がわいた。二重に楽しめそうだ。

この人には「文学」は語れない。 ★☆☆☆☆
個人の著作集ということでそのラインナップを見ると、行政改革などの政治評論から、本書のような文芸評論まで守備範囲が広いように見えるが、実はアプローチの手法は同じであり、あまり知られていない事実を掘り起こして並べているところだけがミソで、評論としての部分は弱い。特に、ペルソナ、マガジン、ピカレスクと続く文芸ものの空虚さは、著者に「文学への愛」がかけらもないことを表している。常識的な目で見れば、三島や川端、太宰が「異常」であるのは当然であり、それをデータで実証するのはご苦労さまだが、それで何を評論したつもりなのだろうか。少しも「文学のデーモン」に近づけていないよ。読者は惑わされずに、「裏話集」程度に眺めるべし。