日暮れどきの藍の空
★★★★★
随分、久しぶりに新しいCDを手にしました。それがこのアルバムでした。
日暮れどきの、藍色がうすく、また濃く広がる空のような美しい音。それがそこにあることで、こんなに満たされた豊かな気持ちで過ごせる。
このアルバムの音に包まれると、私がここにいる、ここにいてよいのだと教えられました。
recien florecida
★★★★★
咲いたばかりの花の描く線の美しさのように繊細で多感で
妖しいまでの瑞々しい情感のふるえをかんじてしまう。
それでいて、精神というものさえ感じさせる″止め”の絶妙感!
あんなに官能に寄り添うバッハははじめてでした。
はかない美しさ
★★★★★
何かアブストラクトなジャズを予想していたら,快く裏切られた。音を詰め込まない南氏のピアノと乾いたリリシズムをたたえた菊地氏のソプラノサックス。終止感が希薄でタイムも自在な危うい浮遊感と,それを支えるプレイヤーの集中。すべてを美しく聴かせる上品な録音。手に触れることのできない夢でも見ているかのような,はかない美しさを感じさせる作品。この音楽を言葉で語るのはむなしい。けれども多くの人に,この音楽に浸ることでしか味わえない幸せのあり方を知ってもらいたい。
ただひたすらに透明
★★★★★
菊地成孔のサックスと、南博のピアノで全体的にシンプルに構成されている。
しかしこの二人により、シンプルがゆえにクリア、かつどこまでも深淵な世界が作り上げられている。
空気や水、どこまでも透明な世界を感じさせてくれるアルバムである。
中でも個人的なおすすめはチェンバロ協奏曲。
音楽を聴いてこんなに感動したのはいつ以来だろう。
涙が出そうなほど心ふるわされた。
ぜひ聴いてほしい一枚である。
この世界に彼らの音楽が
★★★★★
サックスとピアノを中心に構成された、しずかで端整なアルバム。
2週間前に届いてから、日が沈むと毎日聴いている。
どこまでも透明で、切ない音色。
だけどぎりぎりのところで悲しいほうへはゆかず、かぎりなくやさしい。
好きなのは「ラッシュ・ライフ」。
心がしゃぼん玉になって、都会の夜空に高く、果てしなくのぼってゆくような解放感。
高揚と、胸が焼けるような甘さ。
それから、バッハのチェンバロ協奏曲。
何気なく聴いているつもりだったのに、1分をすぎたあたりで、つつ…と自分の目から水が出てきておどろく。
菊地さんのサックス、低音部が木管のようにやわらかいので、はっとしてスピーカーを振り返ってしまう。
あたらしいCDを買うと、それが好きなアーティストの作品でも、体の奥に入ってくるまで2、3回は聴き返すことが多い。
でも、どういうわけか、菊地さんや南さんの音はちがう。
最初の1回で、あっという間にいちばん深いところをさらわれる。
水面にあらわれた波紋を見て、わたしは自分の心に泉があったことに気づかされる。
ほかの誰も入りこめない、外界の何にも影響されることのない聖域。
そのほとりに、ひとり満ち足りてたたずんでいるような気持ちになる。
たったひとつの旋律が、明日を生きのびる理由になる夜も、人生にはたしかにある。
この世界に彼らの音楽があって、ほんとうによかった。