あの「○○の品格」とは大違いのまともな本
★★★☆☆
「品格」という言葉に偏見を持っていて、つまりその「品格」などという言葉を書名にする人の本なんか軽蔑していたのだった。
気持ち悪いではないか。 「○○の品格」といい、そもそも○○に品格があったかのようにいい、自分の個人的な独善的な偏見を古来の日本文化からの継承のようにすり替えるという手法は。
ことわざに虎の威を借る狐というのがあるけれど、軽蔑に値する人たちの中でも最下層なふるまいだろうから。
ところがである。百聞は一見にしかずという。
この林さんの文章の品格は、大嫌いな「○○の品格」とは違い、品の良い人が書いた文章読本なのだった。
ネーミングセンスは悪いと思うが。
林さんは言う。
・新聞コラムを筆写せよ
・古典に親しめ
・筆者の手を離れた文を書け
コラムを筆写するのは、基礎の国語力を身につけるには有効だろう。ほぼ賛成。
古典に親しむのは、古語をすらすら読むことができる能力を身につけるのが先決なので、現代語訳の古典に親しめと言うのなら、賛成。
筆者の手を離れた文というのは、客観的な視野により推敲せよということなので、賛成。ライターなら誰でも賛成することだけれど。
主張していることは至極まとも。
簡潔にして明快
★★★★★
この本で著者が言わんとしていることは2点。
「お手本となる文章を真似ることから始めよう。」
芸術は模倣から、ということですね。
「日本の古典文学に学ぼう。」
確かに、そう思います。
あまりにも簡潔にして明快な論旨ですのでちょっとあっさりしすぎかなと思いますが、著書を出版するときのエピソードなどもあって面白く読みました。
言葉は人なり
★★★★★
「品格ある文章を書く人は、上品な話し言葉を使う人である。
つまり、大切なのは日常の会話なのである」と著者は解く。
文章には、各自の「話し言葉」が伏在しているはずなので、
そこを磨かないと文章もまた磨かれないということだ。
そのためには、毎日の積み重ねが大切であり、
日ごろから自分の言葉を意識的に上品なものにしなければならない。
さらに、自分の気に入った作家の作品を、丹念に一字一句、書き写していく作業や、
常日頃から、日本の古典に親しんでおくことなどが大切だとしている。
こうして、多くの語彙を身に付けることが、
文章を美しく豊かにする近道であり王道であるとする。
リンボウ先生というと、「イギリスはおいしい」など、
イギリス紀行文で有名だが、本当はこういう本こそ書きたかったのではないか。
リンボウ先生のファンも、文章を上達したい人にもお勧めの1冊だ。