真摯な分析がなされていない
★★☆☆☆
財界の年代史としては本書はよくまとまっている。
ただ、本書冒頭で筆者が述べている「『財界』がいかに日本の政治や経済に強い影響を与えているか」についての分析はお手盛りとしか言いようがない。
著者は、財界関係者の発言や経済団体が公表する政策を丹念に拾い、その時々財界は何をしたがっているのかについて明らかにすることには成功している。
しかしながら、現実の政策がどの程度そのような財界の意向の影響を受けて採用されたについては、ほとんど著者の思い込みのみに基づいている。
政治家や官僚、海外勢力等々の様々なアクターの存在を軽視しており、多面的な分析がなされていないのは真摯さに欠ける。
財界の影響力はどの程度あるのか明らかにされるだろうという期待は裏切られた。