定年後から始まる第3の人生を魅力あふれるものにするために、何かを学び直そう。単に勉強するだけでなく、学者になろう、それも一流の学者に。ロングセラー『新 大学教授になる方法』の著者がすすめる、人生挑戦への痛快な指南書。
伊能忠敬は家業を50歳で引退し、52歳で20歳近くも年下の高橋至時に師事し、大日本沿海輿地全図完成という偉業を成し遂げた、いわゆる「定年後の人」である。忠敬のように、定年後20年、30年と続く第3の人生こそ、仕事に追われてできなかったことに専念しよう。そして、せっかくなら一流になろうと、著者は説く。
学問を究めるには、専攻する分野の「トップの仕事」を徹底研究し、最低5人の仮想敵を作り、誰にも負けない有力分野を作ることが必要だ。この方法で、1日8時間の研究活動を続ければ、3年で並の学者は追い越せるはずだと著者は言う。既存のモデルがあるのだから、先発組に追いつくのは簡単だ。市場でも後発の中国が完全に日本を追い上げている。学問の場面で同じことができないわけがない、と。
一流の学者になる4つの方法が詳しく説明される中で一番のおすすめは、今の仕事をエネルギーにして「定年10年前からゆっくり準備するコース」だという。どんなことでも準備期間は楽しいから、定年までの10年間が充実する。そして定年後の長い期間を一流の学者として過ごせるのだから、こんなにすばらしいことはない。
学者になる方法と銘打ちながらも、仕事を、生活を、人生を、自分を、もう一度見つめ直すことができる本になっている。やがて定年を迎えるすべての人に読んでほしい1冊である。(篠田なぎさ)
定年後を含めて社会人途上から学者を目指す人へのエール
★★★★★
題名の通り、本書は定年後に「1」から「一流」の学者を目指す人を対象として、学者生活を知的、環境的にどのように準備して、開始し、実行し、達成してべきかを記した本である。
対象は定年後となっているが、一度学校を卒業して学者以外の社会人としての生活を送っており、その途上で方向転換して学者を目指す人達にとっても十分に参考にすることが可能な内容になっているように感じた。
また、完全な手引き書というよりも、学者を目指す人へのエールを多く含んでいるように感じた。
そのためか、読む側に「大変ではあるけれど、少しでも学者生活を夢見た事のある人ならば、それに向けて取り組んでみる価値は十分にありますよ。頑張ってみませんか。」というメッセージを随所に感じる。
他のレビューにも書かれている通り、多大な努力の積み重ねの上で、得られるものは金銭的な幸福というよりも、至上の知的満足感、達成感と言い切っている点も、学問的探究心を胸に真摯に学者を目指す人にとって、とても清々しい高揚感をもたらしてくれるのではなかろうか。
また、内容にもある通り、「一流」の学者になるためには、と銘打っただけあって、著書の考える「一流」観とそこへの到達経路についても示唆に富む内容となっている。
本書の内容を着実に実行することができたなら、最終的には一流になれることが望ましいのだろうけれど、それを別としても何とか学者としてはやっていけそうな、そんな気持ちにさせてくれる。
また、過去において学者になることを少しでも心中に欲したけれど実行までには至っていない人にとっても、それをもし実行したならという意味で、とても良い疑似体験ができる、興味深い書物になっていると思われる。
ただ、研究者としての生活の具体的詳細を知りたい人にとっては合せてそれについて書かれた他の書物を参考にすると良いかもしれない。
将来的に学者を目指したい、社会人途中で学者への方向転換を図りたい、はたまた学者の生活を少しでも垣間見たい、学者という職業を少しでも知りたい等々の人にとって一読の価値がある書物と思われる。
真にうけられないタイトル
★★☆☆☆
著者は (一流なのかどうか私は知らないが) 学者であり,学者になりたいひとが知るべき経験をいろいろしていることはまちがいないだろう. そういう意味ではこの本は参考になるだろう. しかし,著者は 「定年後に 1 から始め」 たわけではないようなので,この本のタイトルを文字どおりうけとることはできない. ほんとうにそれをめざすひとにとっては,たぶん,あまり内容の濃い本だとはいえない. 著者は多数の本を書いていて,そのなかには類似のテーマもあるから,他の本を読むほうがえるところがあるようにおもえる.
あっと言わせて見せよう
★★★★☆
前作「大学教授になる方法」に続く第2作目である。中身は渡辺昇一氏の「知的生活の方法」と似ているが、題名が具体的で、中身も当然至極のことばかりであり、それが著者の誠実さを表していると見るべきであろう。ただ、「最低10年、研究活動をできるだけの資力のある人」という厳しい条件で、前作で広げた大風呂敷を繕っている印象を与える点は否めない。
書籍の購入に関しては、すべてを購入する必要はないというのが私の持論である。それには、最低、大都市近郊にすむ必要があり図書館を有効に活用すべきである。さらに、どんな大学でもよいから、非常勤講師になることである。そうすれば、他の大学の図書館から本を借りることができる。このメリットは非常に大きい。この本を手に取った人は、それなりに考えがあって既にある程度の実践をしている人であろう。そうであるなら、何年か後に著者に「あなたの本は有益で、今の私がある」と言って見せよう。著者の驚く顔が見たい。おそらく、著者は、自分の本を読んで「本当にそれを実践した人間がいたのか」と驚くに違いない。
大学生活の参考に
★★★★★
私は40代半ばで、この春から再度大学に入学予定です。
猛勉強をして合格したのはいいのですが、今度の学部が自分には全く新しい分野なので、何から手をつけていいのか悩んでいました。
そんなときにこの本に出会い、勇気付けられました。
あせらずに、とりあえずは読書量を増やすことから始めること。
年齢の壁は厚いが、非常勤講師としての道もある。
など、卒業後の就職が難しい年代の自分には、夢物語だけではない、現実的なアドバイスがありがたかったです。
地道に本に埋もれて4年間すごすのも悪くないと思いました。
一流は学問を愛求した結果の奇跡
★★☆☆☆
最低10年間研究に熱中できる人、一日8時間勉強して、七年で七冊の本を書き。。こんな条件を挙げてしまうのは、この本のテーマが、著者自らわき出たものではなく、出版社から与えられたもので、著者自身が一流の学者になるのが如何に希有で困難な事かをよく知っているからであろう。著者の純粋さは、『学問することは、一流の学者なることではない。学問の光に満たされることではないだろうか?この光に満たされると学問が好きで好きでたまらなくなる』にちらりと出てくる。膨大な労力と出費、期待できない見返り。なぜそこまでして自分が学者になりたいのか、動機をあぶりだすのに良い本かもしれない。