責任は明らかだが?
★★★★☆
著者は元大手会計事務所KPMGの広報責任者ということで、会計士業界の歴史から説明しています。30年以上も前に会計学を学んだ評者には、ジョ−ジ・メイ、リトルトン、パチオリなどの名前が出てくる本書を懐かしく読みました。複式簿記や株式会社の発生など、現在では会計史でしか学べない事情を手際よくまとめています。会計が何故発生し、プロフェッショナルが如何なる経緯で誕生したか、またその社会的な責任はどう得られたのかなど、アンダ−セン消滅への軌跡まで含めて過去を振り返ってみるのも、会計士、会計学、監査など今後のあり方を検討する上で必要なことではないでしょうか?
ところで評者には、会計士の責任追及もさることながら、本書35ペ−ジにあるアメリカの会計学者の指摘「学生に理論的根拠を教えるということは、今ではあまり行われていません。...授業で理論を教えることもない。そのことが、今日の会計の質を蝕んでいるかもしれません」はショックでした。(ある程度は知っていましたが)読者の皆さんはどう思われます?もしここから問題が発生したとなると、今回の問題は相当根が深いと言わざるをえませんし、アメリカだけの問題ではないでしょう。
エンロンやワ−ルドコムへの係わり合いで大手会計事務所ア−サ−・アンダ−センが一挙に消滅したという事実は、多くの人に衝撃を与え、所謂内幕本が沢山出ていますが、複式簿記や会計士の歴史からアプロ−チする本書も必読の一書だと思います。内容は星3つですが、意義を含めて星4つとしました。