仲の良くない少年少女が活躍する先の予想を許さない不思議な冒険物語の開幕です。
★★★☆☆
冒険ファンタジー「デルトラ・クエスト」で世界中に大ブームを巻き起こしたオーストラリアの人気女流児童作家ロッダが2007年に刊行した最新傑作シリーズ第1巻です。有名でないせいか世間的には殆ど知られていませんが著者は昔からジェニファー・ロウ名義で執筆しているミステリー作家でもありまして、彼女の本領である数々の児童ファンタジー小説にもひねりの効いた謎解きの要素が活かされている点が人気の秘密なのだと思います。主人公の少年レオが大おばさんからラングランダー一族の宝物だったオルゴールを形見にもらったのがきっかけで物語は始まります。ある日レオ家にいとこの少女ミミが両親の旅行の間預けられる為にやって来て段々雲行きが怪しくなって来ます。我儘でひねくれた性格のミミは形見のオルゴールに興味を示して「ネジを3回以上巻いてはいけない」と書かれた警告文に逆らい、もっとネジを巻いて音楽を聴こうよとレオを誘います。機械が壊れるのを恐れて躊躇うレオの一瞬の隙をついてミミは強引にネジを4回巻きますが・・・・。本書で面白いのはレオがオルゴールの前面に書かれた細かい絵を虫眼鏡で眺めると様々な興味深い場面が見つかり、これが後々物語の謎を解く手掛かりになるという構成の巧みさです。それは今まさにスリを働こうとする寸前の悪人と被害者だったり、ゆりかごで眠る赤ん坊をオオカミが襲おうと狙っていたりする緊張の一瞬が描かれ、レオと一緒に読者も思わずハラハラドキドキさせられるでしょう。それから、右も左も解らない謎だらけのロンド国で度胸は満点だけど考える前に先に行動しようとするミミを、気は小さいが慎重に考えて最善の道を探すレオが待てと制する、仲が良くない二人でも互いに長所短所を補って助け合う姿に、厳しい状況ですが今後への期待が持てます。先の予想を許さない不思議な冒険物語は滑り出し上々で続けて楽しみに読んで行きたいと思います。