本書の特徴の1つは，原理や実験方法についてのわかりやすい解説に加え、解析方法についての詳細な記述がなされていることである．X線反射率法が適用できる積層構造は結晶質である必要はないため応用範囲が広いが、反面，解釈が難しい場合も多い．そのような場合にどのように対処していくか，丁寧に述べられている．通常の積層構造モデルを使ったフィッティングの方法の説明には1章割いて詳しく解説されている。加えて，モデルフリー解析法など今後重要となる解析方法についても1章使って順を追って述べられている．実際の試料の測定やデータ解析を行う時には，後半の章にまとめられている豊富な応用事例が助けになる．さらに、現在使われている装置や測定原理以外の最先端の技術についての章も用意されている．斜入射条件でいかに微小領域を測るのか，化学反応や熱処理，摺動といった「生きている表面・界面」をどのように観察するのか，そのような問題への解決策が述べられている．また，X線反射率法単独での解析にとどまらず、斜入射条件で行うことのできる各種の測定，蛍光X線法，表面X線回折法，反射小角散乱などとの併用することの効果についての解説がある．また，各章の間にあるワンページコラムは，X線反射率法への理解を深めるヒントになりそうだ．
　あえて要望をいうならば，散漫散乱について平易な解説があるほうがよかった．また，応用事例については，固液界面などもっと多くの事例がほしい読者もいるかもしれない．様々な試料の保持の仕方など，試料の扱いについてもアドバイスがあると参考になったと思われる．