個人的には「ずれ」と「大きな壁の中と外」が素晴らしいと思う。「ずれ」は、作家自身が星新一の大ファンと言っているとおり、御大の影響を感じる良質な短編。ハッとするオチが待っている。対して「大きな壁の中と外」では、第三次世界大戦後に全てをコンピューターに制御されることになった人間社会、そしてそこに芽生えた一筋の希望が、若々しく描かれている。
オバサンになってしまったいま読むと、ちょっと赤面しちゃうところもあるのだけれど、新井素子にはまたこういうSFを書いてほしいなぁと思う。