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萬葉集釋注 10 集英社文庫ヘリテージシリーズ

価格: ¥1,300
カテゴリ: 文庫
ブランド: 集英社
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第一人者が歌群間の物語として万葉を読む ★★★★★
 従来『万葉集』の註釈書は、一首ごとに取り上げて前後の関連を疎かにしていた。伊藤博は独自の考えでその欠を補い、複数の歌の群れ、すなわち「歌群」として万葉が構成されているとみて、その視点を大切にした。すでに1995年この原著は刊行されていたが、今回文庫版10巻刊行が完結した。
 著者は2003年に死去されていて、この文庫の完成を見ていないが、ご子息の「文庫版のためのまえがき」に「多くの読者に萬葉集を物語のように読んでもらい、日本古典のすばらしさをあらためて認識はしてほしいというのが、父の年来の悲願だった」という一節に心を打たれる。更に、万葉学者としての生き方に決定的ともいうべき影響を与えた人として澤瀉久孝の名を挙げ、次のように述べている。「ともすれば飛躍しがちな父の想像力は、訓詁の裏づけを欠く理論は空論にすぎないという澤瀉先生の教えに縛られることによって、かえって重層的なおもむきになってゆく」つまり、澤瀉訓詁学の成果を十分取り入れながら、それを独自に発展させたものである。 
「論文は学者の小説である」と生前よく言っていたとのことであるが、もちろんこれは比喩的に言っているはずである。自分の万葉集研究の集大成ともいうべき本書が、血の通った人間味に彩られていることを意味していたのであろう。学者の論文が、ただ実証的ばかりでいいわけでなく、特に文学作品を扱う場合の人間性投入を意味しているのかもしれない。そうしたことに作家田辺聖子が讃辞を贈っている(雅)