原田行くところにトラブルあり
★★★★★
ハードボイルドの傑作。
主人公の原田は本当に「ゆで卵(ハードボイルド)」のごとくまったくぶれず
淡々と(冷淡に?)自分の任務を遂行して行く。
クールでドライな原田が行動するたびに、周りが勝手にてんやわんやになって行く。
原田にはなんの動揺も無く、周りは全員動揺しまくる。
そしていつの間にか(読んでいて本当に気付いた時には既にという感じ)、
街はとんでもない大混乱に陥り。。。
作中、原田がこんなふうなことを言われます。
「よく考えたらお前が全ての原因のような気がする」
その通り。
おもしろいです。
ご一読を。
仮借なき、ハードボイルド!
★★★★☆
‘92年の作品だということにまず驚いた。
出てくる小道具が古いので‥。
単行本ではもっと前の作品なのだろう。
わたしは、この改訂新版で初めて出会った。
しかし、佐々木譲ファンならとうに読んでおられるだろうが、
わたしは三冊ほどしか拝読していないので、ともかく驚いた。
面白い!!
解説によれば本書は、ダシールハメットの「血の収穫」の優れて
見事な本歌どりなのだそうだ。
そういえばマカロニ・ウェスタンのように、人がバタバタ死んでゆく。
再びファンの方には失礼かも知れないが、わたしの読んだ著者の作品の
中ではイチオシだ。
ひと味違ったハードボイルド
★★★★★
ハードボイルド小説というと、アウトローというか反社会的勢力に属するような主人公が、すさまじい暴力を繰り広げるような話が多いという印象を持っていましたが、本書の主人公はメーカー勤務のサラリーマンです。
主人公原田は、経済的に会社に依存しなくて良い境遇にあり、会社の奴隷ではなく自己の原理原則に従って行動するけれども、会社という組織の一員としてやるべき仕事はきちんと遂行しようとするという基本スタンスがあり、本書において様々な暴力・苦難に遭遇しつつも、その基本スタンスを守っていきます。
そして困難な会社の任務を遂行していく中で、その任務遂行を妨害しようとする反社会的勢力等に対し、知恵を使い、場合によっては実力行使で対抗していくわけですが、知恵や実力行使そのものというよりは自己の原理原則を守っていくストイックさにこそ爽快感を感じました。
ハードボイルド小説でありながら濡れ場がないという点も新鮮で、主人公のストイックさを裏付けているようで好印象でした。
ネタバレにならぬようこれ以上の詳細は控えますが、痛快・爽快な一冊です。