漱石っぽいっすよ
★★★★★
原著には忠実ではありませんが、内容をざらっと知りたい方には好著かと思われます。いや、そこそこ忠実でもありますので、贋物として黙殺することなかれです。不幸にも人間として生れ落ちてしまったのですから、人類最高の諷刺文学と評されるガリヴァーを読まずして、そのまま棺おけに収まってしまうのはもったない。ああ、もったいない。
私は翻訳されたものすべてに当たったわけではないので、比較してこの訳が素晴らしいと断言することは出来ませんが、ガリヴァーは漱石がこちらが赤面するくらいに溺愛した文学であって、そうした影響の下に猫の話が書かれたのは頻々に指摘されることであります。原民喜さんはそれを意識されたかは知りませんが、この訳は漱石の文体っぽいっすよ。どこが? ん、知らんがな。なんとなくです。でも良いです。