思わず買ってしまうけど買ってはいけない商品の典型
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外国人の、とくに西洋人の人名はカタカナで表記する際に困ることが多い。同じスペルでも言語圏によって読みが違う(移民の場合はその人のルーツによって違う)とか、同じ言語圏でも地域によって違うことがあるからだ。歴史上の人物だけが載っている、いわゆる人名辞典ではなくて、スペルから発音だけを調べられる固有名詞辞典はあれば欲しいと思う人は少なくないはずである。
ところがこの本は、
・同じスペルに対して複数の発音が載っている場合に、どの言語・地域でどの読みをするのかという必要不可欠な情報が載っていない。
・カタカナ表記のみで発音記号がないというのでは、典拠のない辞書と同じで、信憑性はないに等しい。最低でも、音素ごとに国際発声記号とこの辞書でのカタカナ表記を凡例で示していなければ、どのような原則に基づいてカタカナ化したのか、こちらには判断しようがない。
・他のレビューでも書かれているように、ともかく姓の種類が足りない。一般の人名辞典に出てくるような(つまり過去の著名人にある)姓名は載っているのだが、そんなものはこの本を使わなくても調べられる。
結局、外国人名を責任を持って表記(カタカナで)しなければいけない職業の者にとっては、この本はなんの役にも立たない。日外アソシエーツが編集して紀伊國屋書店が発売しているものとしては、あまりにもお粗末である。